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「おじさんは点灯棒で瓦斯灯に火をつける。でもメイは、メイ自身で、おじさんやママやマスターの心に火を灯してる。それはすごいことなんだよ。メイは夜じゃない。夜を追いやる側だ。あったかい火のほうだよ。わかるかい?」
答えられなかった。でも、おじさんの目はやさしくて、つないだ手はあったかくて、どきどきした。
「さ。あと少し」
おじさんが笑って歩き出す。つられて歩き出して、でも、言わなきゃ、って思った。
「おじさん!」
「ん」
「あの、あのね」
おじさんが振り返る。やさしい目。大きな鷲鼻。ちょび髭。全部全部、大好きだ。だから。
「ありがとう」
おじさんがにっこり、笑った。
とくん。
胸の奥で音がした。
あったかい火が灯る音がした。
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