男だとしってたら助けない

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男だとしってたら助けない

愛美は四人が移動授業の時も休み時間も、トイレの時以外必ずついてくるので嫌気がさしていた。 そんな中のお昼休み。愛美はお弁当を持って一人で屋上に向かっていたが、相変わらずついてくる四人。 愛美「ねぇ。なんでついてくるの?ストーカー?」 愛美は屋上近くの階段で足を止めながらいう。 海漓「お前がピンチにならないか見張ってるんだろ?」 佑馬「こ、こうしないと、すぐ助けられないから!」 愛美は、大きなため息をつく。 愛美「さっきもいったけど、お礼とかお詫びはいらないの。私は貴方が男子だって知っていたら助けなかったわ。たまたま貴方が女子に見えたから助けただけ。つまり私が助けたのは貴方じゃなくて、私の頭の中の女の子なの。お願いだから毎日の日課を邪魔しないで。」 愛美はそういうと再び階段を上がり出す。 それに四人も続くように階段を上がり始める。 尚樹「日課ってことはいつも一人で食べてるの?どうして?」 透「確かに不思議だ。君はこの学校の中で一番人気の人間のはず。友達がいないとは思えないが。」 愛美「貴方達には関係ないでしょ。お昼時間だけは一人で過ごしたいの。わかったらあっちいってよ。」 愛美は振り向きもせずいう。 透「だが、屋上を独り占めする権利は君にはない。」 愛美は足を再びとめる。その手はもう少しで屋上の扉に手をかける所だ。 愛美「…。じゃあせめて私の近くでは食べないで。一人で食べたいの。」 そう言って愛美は屋上に入っていった。 四人は顔を見合せうなずき、屋上にはいる。 少しの風が吹き、回りの景色が見える。遠くにはひまわりの花畑が見え、近くの山は椿が咲いているのか所々が赤い。 愛美はというとその景色を見ながらはしっこでお弁当を開けている。 その姿は美しくみえ、透以外の3人はまるで肖像画のようだと心の中でおもった。 海漓「…。俺達もたべるか。」 尚樹「そうだね!」 四人は愛美と少し離れた位置で食べ始める。 四人は時々愛美をちらっとみながら食べている。 愛美はというと、もくもくとお弁当を食べ、四人の方は見向きしない。 そして食べ終わると、手を合わせたかと思うと、お弁当をそそくさと片付け、立ち上がり歩き出す。 尚樹「あれ。もう行くの?」 愛美は四人に冷たい目線を送りながら、 愛美「こっから先は絶対についてこないで。」 という。 あまりの冷たい目線に透以外の3人は凍りつくような思いをしながら、「は、はい。」という。 愛美は再び歩き出すと、塔屋(とうや)の上に上がり、供水タンクを背にした状態で、風に当たるかのように腕を広々と広げる。 佑馬「そ、そんな事したら危ないよ!」 佑馬達は塔屋の下で、愛美に話しかけるが、愛美は無反応だ。 相変わらず同じポーズでじっとしている。 佑馬は、他三人が止めるのも聞かず、塔屋に上がろうとする。だが、 愛美「やめておいた方がいい。」 と愛美がいったので、手足を止める。 愛美「他の三人はともかく貴方にはここは高すぎる。こない方がいい。それでも上がりたいなら止めないけど、落ちたってもう私は助けないから上がるなら自己責任にして。」 愛美は四人に背を向けたままそういう。 佑馬は少し怖がったが、また上がり始める。 上につくと、風が強く吹く。供水タンクにしがみつきながら愛美に近づく。 佑馬「ね、ねぇ!早く降りようよ!こんなに風が吹いてるのに、そんな事したら危ないよ!僕は君に…お礼がしたいんだよ!死んじゃったらそれができないよ!」 愛美「…。あのね。だからお礼なんていらな…」 そこまでいいながら、佑馬の方を見ると、どうして手を離したのかは知らないが、佑馬は風に吹かれ、横に体が傾き、今にも落ちそうになっていた。 佑馬以外の三人「佑馬!」 海漓達が佑馬を助けようと一歩足を出した時、愛美が佑馬の手をにぎり、引き寄せ、供水タンクの方に投げやる。 その反動で自分が逆に落ちていく中で愛美は、 愛美の心の声(今…私どうして…。) と、佑馬を助けた理由を頭真っ白な状態で考える。 パリーン 気がつくとそんな音がし、愛美は何故か海漓にだかれた状態で廊下にいた。 海漓「つぅー。あっぶねぇ。お前な!俺がアクション映画にでるために、色々やってたから助かったけど、あんまり無茶を…。」 海漓はそこまでいうと、それ以上いうのを止めた。 愛美が真っ青な顔をして佑馬の手を握った手を見ていたからだ。 まるで自分の手が怪物に見えてるかのようなその顔はかなり険しい。騒ぎを聞き付け生徒達があつまる。 そこに他三人もやってくる。 海漓「おい大丈夫か?」 海漓が愛美の肩に手を置こうとする。 愛美はとても怯えたかおで、その手を投げ払いながら、 愛美「触らないでっ!」 という。海漓達四人がびっくりしてる中でようやく愛美は、ハッとなった。 回りには生徒達が集まりざわついている 男子生徒1「いくら男が嫌いだからってあれはないんじゃ…。」 男子生徒2「せっかく助けてくれたのにな。」 愛美はそれを聞いて、立ち上がりその場から立ち去る為走り出す。 海漓「お、おい待てよ!」 海漓は愛美を追いかける。 他三人も追おうとしたが、先生にとめられ、ガラスの破片を片付けるはめになった。 その頃愛美は人気(ひとけ)がない校舎裏まで逃げていた。 そこでようやく、海漓が追い付き、愛美の手を握る。 海漓「お、おいだから待てって…。」 そこで海漓はまた投げはらわれると思って体をこわばらせたが、愛美は投げ払うどころか、振り向き、愛美は涙を浮かべ、 愛美「お願いだからどっかいって!私に触らないで…。本当にいやなの!私の人生を狂わせないで!」 という。その体は小刻みに震えている。 本当は今すぐふるい払いたいんだろう。海漓の手から自分の手をゆっくりのけようとしている。 すぐにのけないのはさっきの男子生徒言葉が気になっているからだ。 海漓は今まで女子からは誰であってもちやほやされてきた。自分達を知らなかった女子でもすぐに自分が好きだといいだすものもいるほどに。 でも今目の前にいる女子は男子が嫌いで、自分の正体を知っても、怯え、拒んでいる。 普通の怖がりなら、海漓はここでほっておいただろう。だが男を助けた手をまるで別物とみたり、あの怯えかただったり、さらに今は過呼吸に近い呼吸になっていることから尋常でないと察した海漓は、 海漓「わかったから。とりあえず落ち着け。過呼吸になってるぞ。」 とりあえず落ち着かそうと、再び強く手を握ってそうといかける。 その時、 琴葉「はぁい!そこまで!」 琴葉がやってきた後ろには尚樹達もいる。 琴葉「その子を離して。貴方にはその子を落ち着かせるのは無理よ。貴方が男である限りね。」 愛美「琴葉…。後はお願い…。」 愛美はそういったかと思うと、倒れてしまったのであった。
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