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人助けの先に
重い……。
背中の荷物が重くて、体が地に沈みそうだ。歩みを進める度に重さが増してる気がする。
そういえば、背中の荷物がだんだんと重くなって、やがて押し潰される妖怪の話があったような……。あれは荷物じゃなくて、おんぶだったっけ? 何て名前の妖怪だったかな?
とりとめもない話を思い浮かべながら、私は必死に荷物を運んだ。
足をひきずったおばあさんを放っておけず、私が持ちますよ! と安請け合いしたものの、今になって後悔していた。これほど重いとは思わなかったのだ。
「あの、大丈夫ですか?」
苦しそうにしている私を、おばあさんが心配そうに見ている。これじゃ逆じゃないの、私がおばあさんを心配してたのに。
「だ、大丈夫ですよ! ところでおばあさんは、なぜひとりで水ノ森神社の辺りを歩いていたんですか?」
詮索ではなく、世間話でもしようと思ったのだ。楽しく話をしていれば、辛さを忘れさせてくれるような気がした。
「お坊ちゃまにお届けしたくて。あそこが近道なもんですから」
おばあさんは照れ笑いしながら、答えてくれた。
お坊ちゃま? へぇ、この辺りにはどこぞの富豪の家でもあるのかしら。
「お坊ちゃまへの贈り物なんですか?」
「はい。おこがましいですが、あたしにとっては孫みたいなもんでして」
おばあさんは幸せそうに微笑んでいる。その笑顔が可愛かった。
よほど大切なお坊ちゃまなんだろう。その笑顔で力が湧いてくる気がした。
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