スクールカースト

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スクールカースト

「はい、それじゃあ、学級委員長は、西園寺さんに決まりました。西園寺さん、一言お願い出来ますか」 「はぁい。皆さんの学校生活が過ごしやすくなるように尽力しますので、よろしくぅ」  西園寺麗華(さいおんじれいか)、26票。  黒川新一(くろかわしんいち)、3票。  無効、1票。  書記の溝田沙羅(みぞたさら)が板書した投票結果を背に、作り笑いでペコリと形だけ頭を下げる。こんな挨拶に意味なんかないってことは、皆分かっている。それでも、パラパラと拍手が起こった。  廊下側、1番後ろの席から、一際大きく拍手を送っているおかっぱ頭が目に入る。斉藤愛花(さいとうあいか)だ。チラと視線を投げると、笑顔なんか向けてきた。やめてよね、そういうの、ウザい。 「西園寺さん、1年間よろしく」  自席に戻る途中で、冴えない銀縁眼鏡の黒川が、右手を差し出してきた。投票で次点の彼は、自動的に副委員長になる。 「はぁい。こちらこそぉ」  ニコッと微笑みだけを返し、スカートを翻して通り過ぎると、席に着く。フン。気安く握手なんかしないわよ、銀縁メガネの「コナン(もど)き」クン。 「やだ、アイツ、麗華さんに触ろうとして」 「ね、ヤラシー」  取り巻きの結萌(ゆめ)波月(はづき)が、聞こえよがしにクスクス笑う。振り向かない黒川の背中が、屈辱を滲ませている。私は、まぁまぁと2人を制する。 「いいのよ。これから1年間、お世話になるんだからぁ」  謙虚さをアピりながら、眉なんか下げてみる。ね、私、寛大でしょ? 「やーん、麗華さん、優しぃー」 「ね、帰りにタピって帰らない? 駅前に新しいスタンド出来たのよね」 「わーい、さんせー」  HRが終わったので、他の生徒達もガタガタと席を立っている。 「愛花、あなたも行くでしょ?」  教室の隅っこで、教科書を鞄に詰めていた愛花が、ビクッと顔を上げた。タピオカだって、ちょっと気の利いた店に行くと1杯800円くらいする。お小遣いに余裕のない彼女が戸惑う訳だ。 「あっ、あたしは、あの」 「ほら、行くわよ?」  はっきり言わない彼女が悪い。私も席を立つと、さっさと愛花を立たせて、腕を掴んだ。
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