スクールカースト

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 鍵を開けて家に入ると、まっすぐに自分の部屋に入る。制服から着替えて、デスクトップの電源を入れる。ヘッドセットを装着して、サイトにアクセス。IDとパスワードを打ち、専用ルームで待機する。 「こんにちは、レイカ」  画面右上の入室のボタンが点灯して、爽やかなイケメンが現れた。淡いピンクのYシャツに煉瓦色のネクタイ。面長だが鼻筋が細く、切れ長の二重瞼が涼しげ。理知的な雰囲気が滲み出ている。 「こんにちは、川相(かわい)センセ」 「この前の模試の結果が出てるよ。確認した?」 「いいえ。まだ。見ていい?」 「勿論」  サブウィンドウで「成績」から「4月模試結果」を開く。IDと名前で探さなくても――。 「や、まぁた、2位ぃー?」 「順位より、偏差値見て。前回より上がっているじゃない」  川相センセがすかさずフォローするも、私は面白くない。  総合順位(国・数・英)  1位 298点(SS(偏差値) 80)シロクマ カケル  2位 295点(SS 78)サイオンジ レイカ  3位 281点(SS 74)ササキ マコト  またコイツ、シロクマに負けた。やだ、偏差値80? くっやしい。 「じゃ、今日は模試の誤答の復習から始めようか」 「はぁい」  悔しい。悔しい! 悔しい!!  今度の8月模試は負けないんだから。私はサブウィンドウの「4月模試問題」をクリックする。既に模試直後に1回、その後も少なくとも10回は、解き直している。それでも。苦手を作ら・残さ・忘れ。受験合格のための「3宣言」を徹底しなくちゃ。川相センセの解説を受けながら、復讐(リベンジ)を誓うのだった。 -*-*-  夕食後、就寝までの2時間は、若さと潤いを保つためのおうちエステ(メンテナンス)に費やす。美は1日にして成らず。勉強も美容も、おんなじことだ。  某著名美容家がネット公開している動画で学んだ通り、15分間リンパマッサージを施した後、たっぷりの泡で隅々まで洗顔する。それから、ビタミン類や保湿成分が配合された美容液を浸した、美容パックを顔に貼り付ける。成分が浸透するまでの待ち時間、肘から先と膝から爪先まで、美容クリームを丁寧に塗り込んでいく。最後に、パックを外した顔にも美容クリーム。与えた成分と潤いを逃さないように、肌にバリヤーを張るのだ。  額に指先が触れ、不意に愛花のおでこニキビを思い出す。ダメダメ! あんなモノが肌で生まれ育つなんて、ゾッとする。  知識は増えるほど思考を柔軟にしてくれるし、肌は手間をかけるほど身心に誇りをもたらしてくれる。どちらも手を抜かないのが、私の信条(ポリシー)だ。
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