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レボリューション
「……嘘」
7月下旬。1週間前に実施した1学期末考査の結果が出た。廊下に張り出された順位表を見上げて、息を飲んだ。
2年 総合順位(5教科合計・500点)
1位 489点 白熊 翔
2位 477点 西園寺 麗華
3位 470点 黒川 新一
入学以来、首位の座を突っ走ってきたのに――。
順位の掲示を見に来た生徒達も、心なしかザワついている。
『えーっ、西園寺さんが2位?』
『白熊君、すごーい!』
『ついに女王も陥落かぁ……』
白熊が来たから。愛花のことがあったから。――そんなことは、言い訳だ。もしそれで集中を欠いたのだとしたら、所詮、私はそこまでの実力しかないのだ。
頭では分かっている。
けれど。感情は、乱されたままだ。
「麗華さん……」
結萌と波月が、掲示を見上げる人垣の中で、途方に暮れた眼差しを向けている。
「心配しないで。でも、次は負けないから」
意地で微笑みを保ってみせたけど、悔しさは滲んでいたかもしれない。
衝撃に追い打ちをかけたのは、愛花が学年順位を100番近く上げていたことだった。
-*-*-
そして、翌月。リベンジを誓った「8月模試」の結果が出た。
総合順位(国・数・英)
1位 295点(SS 81)シロクマ カケル
2位 289点(SS 77)ササキ マコト
3位 288点(SS 76)サイオンジ レイカ
「う……嘘……」
油断なんかしなかった。期末考査も今回の模試も、全力で取り組んだ結果だ。もう――現実を受け入れる……認めるしかない。
「レイカ、大丈夫? そんなにショック受けないで。1つ1つ、苦手を克服すれば大丈……」
「川相センセ……ごめんなさい、今日の授業はパスさせて」
「レイカ?」
手が勝手に「退室」のボタンをクリックして、一方的にオフラインにしていた。
悔しい。白熊は、私からなにもかも奪っていく。学年トップの座も、学内での人気も、私の――親友も。このままじゃ、生徒会長だって、きっと。
その夜、バスルームで泣いた。悔し涙ではない。自己憐憫の涙なんて、何年振りに流しただろう。
弱気になっている自分が許せなかった。
-*-*-
「いやっ、嘘……!」
翌朝、前髪を上げたまま固まった。
洗面台の鏡に映る、額にポツリ。肌の炎症を示すニキビが出来ている。
いくら勉強時間を増やしたからといって、スキンケアの手を抜いた訳じゃないのに。
ニキビが出来る原因は、主に5つ。
1.油性肌
2.食生活の乱れ
3.寝不足
4.ホルモンの分泌異常
5.ストレス
1、2、4は関係ない。3は若干あるかもしれないが、思い当たるのは、5。
「冗談じゃないわよ!」
何てこと――この私が、ここまで追い込まれるなんて。
いつもより念入りに洗顔する。ニキビ薬のストックなんて持ち合わせていない。朝食のあと、すぐに買いに行かなくちゃ。
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