23人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
スクールカースト
「はい、それじゃあ、学級委員長は、西園寺さんに決まりました。西園寺さん、一言お願い出来ますか」
「はぁい。皆さんの学校生活が過ごしやすくなるように尽力しますので、よろしくぅ」
西園寺麗華、26票。
黒川新一、3票。
無効、1票。
書記の溝田沙羅が板書した投票結果を背に、作り笑いでペコリと形だけ頭を下げる。こんな挨拶に意味なんかないってことは、皆分かっている。それでも、パラパラと拍手が起こった。
廊下側、1番後ろの席から、一際大きく拍手を送っているおかっぱ頭が目に入る。斉藤愛花だ。チラと視線を投げると、笑顔なんか向けてきた。やめてよね、そういうの、ウザい。
「西園寺さん、1年間よろしく」
自席に戻る途中で、冴えない銀縁眼鏡の黒川が、右手を差し出してきた。投票で次点の彼は、自動的に副委員長になる。
「はぁい。こちらこそぉ」
ニコッと微笑みだけを返し、スカートを翻して通り過ぎると、席に着く。フン。気安く握手なんかしないわよ、銀縁メガネの「コナン擬き」クン。
「やだ、アイツ、麗華さんに触ろうとして」
「ね、ヤラシー」
取り巻きの結萌と波月が、聞こえよがしにクスクス笑う。振り向かない黒川の背中が、屈辱を滲ませている。私は、まぁまぁと2人を制する。
「いいのよ。これから1年間、お世話になるんだからぁ」
謙虚さをアピりながら、眉なんか下げてみる。ね、私、寛大でしょ?
「やーん、麗華さん、優しぃー」
「ね、帰りにタピって帰らない? 駅前に新しいスタンド出来たのよね」
「わーい、さんせー」
HRが終わったので、他の生徒達もガタガタと席を立っている。
「愛花、あなたも行くでしょ?」
教室の隅っこで、教科書を鞄に詰めていた愛花が、ビクッと顔を上げた。タピオカだって、ちょっと気の利いた店に行くと1杯800円くらいする。お小遣いに余裕のない彼女が戸惑う訳だ。
「あっ、あたしは、あの」
「ほら、行くわよ?」
はっきり言わない彼女が悪い。私も席を立つと、さっさと愛花を立たせて、腕を掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!