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嵐の後の…
翌朝、目が覚めたら愛しい人の寝顔がある。
無防備に眠る姿に、愛しさが込み上げてくる。
何度、好きになれば良いんだろう…。
そんな事を考えながら、そっと田中さんの髪の毛に触れる。
…いつだったか、翔が「田中は人前では寝ない」と聞いていた。
今、規則正しい寝息を聞いて、自分だけが知っている田中さんの寝顔に胸が熱くなる。
「陽一さん、大好き…」
小さく呟いてそっとキスをする。
その瞬間、抱き締められて
「愛の告白は、起きてる時にして欲しいですね…」
と言われて、僕の唇にキスを落とす。
「お…起きてたんですか!」
慌てて叫んだ僕に、田中さんは意地悪な笑顔を浮かべて
「折角の蒼介さんからの告白を、俺が聞き逃す訳ないだろう?」
って答えた。
それでも、まだ眠そうな顔に思わず笑ってしまうと
「何ですか?」
って、眠そうな声が聞いてくる。
「いや、眠そうだな~って…」
そう答えると
「昨夜は張り切り過ぎました。もう少し、寝かせて下さい」
と言われて、僕は赤面する。
そんな僕の事も気にせず、田中さんの腕が僕を抱き寄せて、大切そうに抱き締められた。
僕は幸せ過ぎて、涙が溢れそうになる。
こんなに誰かを好きになるなんて、思わなかった。
愛しくて胸が痛むのは、幸せな時にも痛むんだって知った。
安心しきった田中さんの寝息を聞きながら、僕も重たくなった瞼を閉じる。
愛しい人の温もりと香りに包まれて、僕は幸せを噛み締めていた。
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