第三章 入試と出会い

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僕は、昨晩あおちゃんからもらった筆箱を取り出し 「これ、使って良いよ。ただ、大事な物だから必ず返せよ」 そう言った。 あおちゃんには申し訳ないけど、使い慣れない筆記用具を大事な試験で使う事が出来なかった。 するとそいつは 「お前…筆箱を二つも持って歩いてんのか?」 っと、驚いたように聞いて来た。 「違うよ!お前にはこんな学校だろうけど、僕は此処が第一志望なんだ。 幼馴染が、受験に受かるようにってくれた奴だよ。だから、絶対に返せよ!」 僕はそう言いながら、嫌々筆箱を貸し出した。 そいつは「サンキュー」って言いながら自席に戻ったが、直ぐに僕の席に戻って来た。 「あのさ…これ、カンニング扱いされそうだから鉛筆2本と消しゴムだけ借りとくわ」 と言って、自分の席へと戻って行った。 (カンニング扱い?) 疑問に思って筆箱を開けると、蓋に『蒼ちゃん頑張れ!葵より』ってマジックで書いてあった。 そして『お守り』と書かれた紙が入っている。 僕はあおちゃんの気持ちが嬉しくて、思わず笑みが零れる。 胸が温かくなって、僕が『お守り』と書かれた紙を握り締めた時、視線を感じて振り向いた。すると、あいつがニヤニヤしながら僕の顔を見ていた。 僕は咳払いをしてお守りを筆箱に戻すと、鞄の中へと締まった。 すると始業ベルが鳴り響き、生徒会の人が入って来た。 いよいよ受験だ…と、僕は大きく深呼吸して、受験の説明をする生徒会の人の話を聞いていた。
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