第四章 入学と親友

1/5

519人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ

第四章 入学と親友

入試が無事に終わり、僕は全教科満点で特待生入学が決まった。 桐楠大附始まって以来の快挙らしく、入学式に新入生代表の言葉を任された。 両親はもちろん、推薦してくれた京子さんも大喜びしてくれて、入学式には何故かうちの両親と京子さんまでやって来た。 章三とあおちゃんも来たがったが、学校があるので来られずに不貞腐れてたっけ…。 入学式当日。 桐楠大附は校門から校舎までの通路が桜並木になっている。 圧巻する程の桜並木に驚いていると、京子さんが 「裏校舎の白梅の林も綺麗よ。私と神崎君が出会った場所なの」 と、教えてくれたので、僕は入学式の前にこっそり梅林に足を運んでみた。 桜並木とは違う真っ白な梅林に声を失う。 白梅の白が眩しくて思わず目を細めると、ふわりと嗅いだ覚えのあるコロンの香りが鼻腔を掠める。 香りの方に視線を向けると、コロンの主が驚いた顔をして僕を見ていた。 しばらく見つめ合っていると、突風が吹いて白い花びらが宙を舞う。 するとその人は小さく微笑んで、ゆっくりと僕に近付いて来た。 そして僕の髪の毛に触れると 「髪の毛に着いていましたよ」 と、白い花びらを僕の手に乗せる。 その動きが、まるで映画のワンシーンのように綺麗だった。ぼ~っと見つめていると 「貴方も合格なさったんですね。おめでとうございます」 その人はそう言うと、腕時計を見て 「そろそろ、入学式のお時間ですよ」 って微笑んだ。 「ありがとうございます」 僕はそう言ってお辞儀をすると、体育館まで走って向かった。 心臓がドキドキと高鳴っているのは、新入生代表があるからだと自分に言い聞かせていた。 入学式が無事に終わり、クラスに戻って絶句した。 「よぉ、同じクラスだな」 そう、入試で出会ったアイツが僕の後ろの席に座っていた。 あの人が居るから、無事に受かって入学しているだろうとは思ってたけど…まさかの同じクラス。 しかも、僕の名前が『赤地蒼介』で、あいつの名前が『秋月 翔』なので、前後という並びになっているなんて…。 僕が唖然としていると 「入学式前に声を掛けたんだけど、お前、全然気付かないし」 屈託なく笑う笑顔に、悪いヤツでは無いんだろうと思う。…でも、結城の時のように裏切られるのは御免だと思った。 思わず警戒していると 「あ、警戒してる?安心して良いよ。 俺、お前みたいなタイプには免疫あるから」 って言って来た。 「僕みたいなタイプって、どういう意味だよ」 ムッとして答えると 「無駄にフェロモン撒き散らすタイプ」 と、失礼な言葉を吐いた。 「な!」 「大体、警戒してるつもりかもしれないけど、人の良さが滲み出てるんだよなぁ~。良く、それで今まで無事に来れたよな」 人の気も知らないで、こいつは言いたい放題言ってきた。 僕が頭に来て言い返そうとした時、背後からぬっと巨体が現われる。 振り向くと、身長190cmはありそうな大柄で、髪の毛が金髪。 目の色がグレー。 顔立ちはハーフらしく、綺麗な顔をしていた。 が、品行方正な学校に似つかわしく無い、制服のブレザーのボタンは全開。 シャツはズボンから全部出して、ネクタイもシャツが第二ボタンまで開けられているので、だらしなく結ばれている。 そいつは僕の顔をマジマジと見ると 「お前、赤地って…。赤地章三の親戚か何かか?」 って聞いて来た。 「章三?章三は僕の弟だけど…」 凄い迫力に押され気味になりながら答えると、僕の頭の先から爪先までジロジロ眺めてから 「弟?似てねぇな…。あいつ、あんたみたいな女顔してねぇかならな」 と呟いた。 すると、僕の席の後ろの奴が「ぷっ」っと吹き出す。 (なんて失礼な奴等なんだ!) 頭に来て2人を睨み付けると 「睨んでも怖くないよ、蒼ちゃん」 僕の後ろの席の奴が、にっこり微笑んで呟いた。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

519人が本棚に入れています
本棚に追加