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呆然としている僕に、秋月は
「嫌われるより、好かれてるんだから良いんじゃないの?」
って、呑気に言ってるけど…。
「はぁ…」
大きな溜め息を吐いた僕に
「そんなに深刻な事か?」
と、秋月に呆れたように言われてしまう。
天使様とか言われてしまう、こちらの身になって欲しいもんだ。
そう考えていると、秋月が自分の顎を指して
「どうした?ここ、怪我でもしたか?」
と聞いて来た。
「え?」
驚いて顎を触ると、赤い絵の具が着いていたみたいだった。
「絵具だ…」
制服のポケットからハンカチを取り出すと、ポケットから鍵がポロリと落ちた。
秋月は鍵を手に取り
「何の鍵だ?その絵具と関係あるのか?」
怪しいという顔をして僕を見る秋月に苦笑いを返す。
「冴木先輩に追い掛けられてる時に…ちょっとな」
言葉を濁すと
「お前、まさか永田から鍵を貰ったんじゃないだろうな?」
と、低い声で秋月が聞いて来る。
確信を突かれて思わずドキリとすると
「悪いことは言わない。あいつには気を付けろ」
珍しく真剣な顔で秋月が呟いた。
「気を付けろって…」
思わず聞き返そうとした時、5時限目のチャイムが鳴り響いて、そのままうやむやになってしまった。
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