第二章 裏切り

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どの位の時間が経過したのか分からない。 なんだか胸元に変な感じがして目を開けた。 目に飛び込んで来た光景に、僕は一瞬何が起こっているのか理解出来なかった。 親友だと信じていた奴が、僕のパジャマの上着のボタンを全て外し、片手で僕の胸を触りながら反対側に舌を這わせている。 「結城?」 思わず呟いた俺に、結城が顔を上げる。 息は荒く、目は欲情している。 (ああ…、結局そうなんだ…) 僕の心は絶望で沈んでいく。 「結城!」 思わず叫んだ僕に、結城が顔を上げた。 「蒼介…愛してる…」 耳元で囁かれ、耳を舐められる。 全身に冷や水を浴びせられたような気持ちになり、嫌悪感が僕の心を覆う。 結城の唇は耳から首筋を辿り、僕の唇を奪う。 結局、みんな僕を女性に出来ないはけ口としてしか見ないのだと愕然とした。 ずっと信じていた親友の行動に、僕の心は石のように固まって動かなくなってしまった。 「う!」 重ねられた唇から、結城の舌が差し込まれる。 僕が必死に顔を逸らして、両手で結城を押しのけようと抵抗すると 「蒼介も、こうなるって分かってて泊まったんだろう?」 そう言われて僕の動きが止まる。 (そんな風に思ってたんだ…) 頭を殴られたような気分になった。 僕は…信じていたのに…。 お前は、お前だけは僕を同じ男として対等に扱ってくれてるって信じたのに…。 瞳から涙が溢れて来る。 助けを呼んでも、隣室の兄が不在では誰も助けてはくれない。 絶望的な状況に僕は、自分の不運を恨んだ。 人は絶望的になると、全てを諦めてしまうらしい。 全身の力が抜け、僕は逃げられない状況に打ちひしがられていた。 結城はそれを僕の同意と見たらしく、再び僕の胸の突起に指を這わせて摘み上げながら、キスをして来た。 「蒼介、歯を食いしばるの止めて。口、開けて…」 囁いて言われ、ゾッとする。 僕が口に手を当てて首を横に振ると、結城は困ったように笑い 「相変わらず潔癖症だな…、蒼介は…。 大丈夫、ゆっくり慣らして上げるから」 と、甘く囁く。 でも、僕にはその声が恐怖でしか無い。 寝ている間に僕の両足を割り開き、その間に身体を入れていた結城の怒張したモノが僕の下半身に当たっている。 この後の展開が怖くて、身体がガチガチと震え始める。 首筋から胸元へと結城の唇が這いまわり、音を立てて胸元を舐める感触に吐き気が起こる。 結城は時折、僕の肌を吸い上げると甘噛みをして来た。 チリっとした痛みに俺は唇を噛み締める。 すると僕の唇を結城が舐めて 「蒼介、声、聞かせて」 甘えるように囁く。 (助けて!誰か!) 涙が瞼に滲むと、結城がそれを舐めとる。 全てが嫌悪でしか無く、完全に結城に覆い被された状況で逃げようが無かった。
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