第二章 裏切り

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すると逆光で顔は見えなかったが、学ラン姿が目に入った。 どうやら二人居るようで 「俺には、その子が嫌がってるようにしか見えないんだけど?」 最初に声を掛けてくれた人の後ろから、もう一人の声が聞こえる。 「しかも君、俺にもしつこく付き纏ってるよね?」 の声が聞こえたと同時に、 「痛たたたた!」 と叫び、僕を押えた人の手が離れた。 抱き上げられていた僕は、もう一人の人によって抱き留められた。 「コウ、そっちは?」 「大丈夫、無傷だよ」 学ランから、男の人とは思えない甘い香りがするその人が返事をすると、あっという間に逆光のその人は僕を襲った男を地べたに押え付けている。 「面倒くさい事になるから、きみは帰りな」 僕を抱き留めてくれた甘い香りの人を見上げると、男性とは思えない程に綺麗な顔をした人が微笑んで僕の頭を撫でてくれた。 「ありがとうございます」 僕がお辞儀をすると、綺麗なお兄さんはひらひらと手を振って僕を見送ってくれた。 後から聞いた話では、犯人はあの時の綺麗なお兄さんにストーカーをしていたらしく、逮捕された。その後、犯人の携帯から僕の写真も発見され、被害が無かったのかを警察が事情聴取にやって来た。 その後しばらくは、南高校のお兄さん達が僕の心配をしてくれて、警察に僕の家の近辺をパトロールするように言ってくれたらしい。 お蔭で、僕はその後しばらく平和な日々を過ごしていた。 そんな事もあって、僕にとって南高校は憧れだった。 しかも助けてくれた二人の名前が分からないままだったので、南高校に行って調べようと思っていたのだ。 僕が悩んでいると 「無理にとは…言わないわ。考えておいてね」 とだけ言い残し、京子さんは僕の部屋を後にした。 今更あの時の二人を探すにも、綺麗なお兄さんの顔も朧気だった。 甘い香りと、綺麗な人だったとだけしか覚えていない。 しかも、今更「あの時はありがとうございます」と言われた所で、二人を困らせるだけになると思った。 そう考えると、南高校に固執する意味は無いのかもしれない。 僕はそう考えて、階段を下りてリビングへと向かった。 丁度、京子さんが帰り支度をしていた。 僕は意を決して 「あの、京子さん。さっきの話、お願いします」 そう伝えた。 京子さんは微笑んで 「了解、後は任せて頂戴!」 と、胸を叩いて頷いた。
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