第十五章 もう、離れない…

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「あの…準備は出来まして?」 西園寺さんの声に俺と翔が慌てて立ち上がり……『ビリ』っと布が破ける音がした。 「ごめんなさい!」  この後、俺と翔はひたすら謝り続けた。 ドレスの裾が長すぎて僕と翔が裾を踏んでしまい、ドレスの一部分が割けてしまったのだ。 「…仕方ないですわ。このくらいでしたら、縫えばなんとかなりますし…」 そう言われて 「俺がやります」 「僕がやります」 声を揃えて叫んだ。 「取り敢えず、他の確認をさせて下さい。ウエストはきつくないですか?」 そう聞かれて、他は何ともなく着られていることに驚く。 デザインも華奢に見えるように作れているみたいで、何となく体のラインも女性っぽくみえるようになっている。 「蒼介様は、メイク無しでも綺麗ですわ~」 女子にうっとりされて言われて、げんなりする。 「やっべ~。俺、赤地ならいけそうな気がする」 野郎声には、思い切り睨み付けてやったが…。(後で覚えてろ!) すると西園寺さんに 「蒼介様、そんなお顔なさる暇があるのでしたら、こちらのカツラを付けて下さいませ!」 そう言われて、頭に金髪のカツラを被せられ、鏡に写る自分の顔に悲しくなる。 その間に、翔の衣装合わせも始まっていて…。 何であいつが騎士の恰好で、僕が女装な訳? そう考えるとムカムカした来た。 女子は翔の騎士の恰好にうっとりしていて、これってなんか差別な気がする。 僕だって、立派な高校男子だと主張したい! この日の放課後、僕の家で翔と破った部分をひたすら縫っていた。 縫い方は女子に教わり、ひたすらチクチクと縫物をして2時間後にやっと終わった。 「終わった~!」 二人で声を合わせて叫ぶと、取り敢えず着て見て目立たないかを確認する事になった。 僕は自分で着替える準備をしながら、ハタと気が付いた。 別に此処で確認するなら、僕じゃないくたって良いんじゃないかって…。 「おい、確認するだけならお前でも構わないよな?」 目を座らせて呟くと 「はぁ?お前に合わせて作ったんだから、お前が着ないと意味無いだろう?」 翔が呆れた顔で反論して来た。 「そもそも!何でお前が騎士で俺が姫なんだよ!」 怒って叫ぶと 「知らねぇよ!俺に言うな!」 と翔が言い返して来た。 「お前、ずるいんだよ!お前もこの苦痛を味わって見ろ!」 僕が叫んで翔の胸倉を掴んだ。 「ちょ…お前、何するんだよ!」 「翔、お前も一度女装の苦痛を味わえ!」 翔のネクタイを外そうとすると、手を払われる。 「お前、武術やっててズルいぞ!」 叫んだ僕に 「ズルいってお前な!」 そう言い掛けた時、足元のノートを踏んでしまったらしい翔が、滑って転んだ隙に馬乗りになって 「さぁ!観念して僕の苦痛を味わうが良い!」 ネクタイを外してシャツのボタンを外そうとすると、翔が抵抗してくる。 それが余計にムカついて、何故かムキになってシャツを剥がそうとしていたら 「蒼ちゃん!凄い音がしたけど大丈夫…」 ってあおちゃんの声と同時にドアが開いた。 もちろん、僕と翔が固まったのは言うまでもない。 「ご…ごめんなさい!」 って叫ばれて、ドアが閉められる。 「あおちゃん!誤解だよ!」 「神崎君、違うんだ!」 慌てて叫んでも、後の祭り。 「そ~う~す~け~」 翔の目が怒っている。 「あははははは…ごめん」 必死に笑って誤魔化したけど、この後、余計にあおちゃんに翔が避けられる事になって恨まれる事になった。
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