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 担当医師は娘を前に、モニター画面を示しながらも彼女を意識せずにはいられなかった。  大学から直接訪れた彼女は、白とベージュに統一された院内の清潔で無機質な空間に、落ち着いたファッションとはいえ華やかな色を添え、薄化粧であってさえも、その凛とした涼しくも愛らしい表情を映す彼女の存在感は、大輪(たいりん)の華を添えたように輝いて見えた。 「もう長くないのですね」 「残念ですが、お父さまはもってこの一二週間ほどかと思われます」 「何時(いつ)もありがとうございます」  医師に向かい深く丁寧なお辞儀する娘の、ゆるやかに整った細く艶やかな眉尻に若い医者は思わず視線を奪われていた。
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