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「そこを変える社会活動をしたらノーベル賞にも近づくんじゃない?」
またも冬夕は首を傾げて話しはじめる。
「先進国で、先進国って言い方もどうかと思うけれど、こういう国では投票率が高いのは大前提だと思うんだよね。その上で、平和に貢献する確かなことをしなくちゃならないと思うんだ。でも、それはもうじっくり時間をかけることにした。最年少受賞は逃しちゃっているしさあ。
だからまず、わたしたちは、ランジェリーやサニタリーで女性がもっと快適に過ごしてもらえるように環境を整えることを目的にします」
あ、と言って、冬夕は大きなバッグをまたごそごそとかき分ける。
「だから、スプスプのパッケージもおしゃれにしなくちゃいけないと思っているんだ。それで、そのサンプルも持ってきたんだった。はい、これ」
「あ、素敵! これ、わたしにくれたバレンタインのチョコと同じところのだ」
それは、チョコフェスに参加していた海外のチョコレートブランドのパッケージ。ビビットなブルーに金箔の文字。シンプルで甘くないデザインなのに、うっとりするほど美しい。こういう化粧箱にランジェリーが入っていたら、ちょっとしたお姫さま気分になれるよなあ。
「嬉しい。覚えていてくれたの」
「もちろん。だって、一緒に買いに行ったのに、別なところで、わざわざ用意してくれるなんてびっくりしたんだもん」
そう、バレンタインは冬夕といっしょにデパートの特設会場に出かけたんだ。基本、わたしたちは友チョコだから、女の子に配る用のチョコを買い集めた。
それなのに、わたしの知らないところで、こっそり準備するなんて、冬夕、もしかして彼氏いるんじゃないのって思ったんだよね。実際、いてもおかしくないんだけれど、その割には、わたしといる時間が長いよね。わたしが、彼氏だったら絶対、嫉妬する。
「こういうパッケージまでこだわると、単価に直接響いてくるんだよね。さっきの話に戻るけれど、サニタリー用のショーツのことまで考えるとセット価格はかなり上がってしまうと思う。
この間のあゆみちゃんや今回のまどかちゃんの分は、市販のブラ&ショーツのお値段くらいでいいけれど、これから先は、少し値上げかな。
その辺の損益の分岐点とか、原価率とか、きちんと計算しなくちゃいけないんだけれど、結構苦手」
「ふーん。冬夕なら得意そうな気がするけれど。でもそれ、わたし、立候補するよ。つまり簿記的なことだよね。ウチのママ、個人事業主としてやっているから、少し知識があるんだ。それに数字の苦手も克服したいし」
「サンキュー。もちろんわたしも勉強する。ブランドを作るって難しいことばっかりだよね。オンラインショップのことも勉強しなくちゃならないし。
でもまずはアイテムがないことにはお話にならないから、頑張って作ろうか」
わたしたちはグータッチをする。
「で、生地のことなんだけれど」
冬夕が、今度はスマートフォンを取り出して地図アプリを開く。
「やっぱり安くすませるのに越したことはないよね。で、ここに生地の問屋街があるんだけど、一緒に買いにゆかない?」
「いいね。久しぶりのデートじゃん」
「デートって言ってくれるの、嬉しい。問屋街だから、土日は休みなんだよね。早速、明日ゆきたいんだけれど、どうかな?」
「オーケー。ここだと、自転車で行ける距離だよね」
「うん。たくさん生地を買いたいから、リュックで来てね」
「了解」
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