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それから一週間後、また悪魔がお父さんの前に現れて二つ目の願いは何ですか?と聞いて来たそうだ。
お父さんは待ってましたとばかりに息子を秀才にしてくださいと答えたそうだ。そしたら悪魔は分かりましたと答えるや否や、ぱっと消えてしまったそうだ。
で、お父さんは僕がテストで100点満点を取ったんでびっくり仰天して喜んでくれて僕は勿論とても嬉しくなった。
それから一週間後、また悪魔がお父さんの前に現れて三つ目の願いは何ですか?と聞いて来たそうだ。お父さんは今度は流石に慎重になったそうだ。何しろこの願いが叶ったら一週間後に魂を奪われることになるのだから当然だ。
お父さんは予め考えていた第一の答えをこう言ったそうだ。私に永遠の命をくださいと。そしたら悪魔はそれは出来ませんときっぱり答えたそうだ。
お父さんは悪魔のことを或る程度知っているからやっぱり駄目かと思って第二の答えをこう言ったそうだ。それでは一週間を千年にしてくださいと。そしたら悪魔は永遠の命を持つ自分にとって一週間も千年も同じようなものだから軽く請け合ってくれて例によってぱっと消えたそうだ。
いやはや、これでお母さんは千年女王みたいに千年美人の儘、過ごすことになり、お父さんは万年平社員みたいに千年サラリーマンの儘、過ごすことになり、僕は出木杉英才君みたいに千年小学六年生の儘、過ごすことになったのだ。僕とお母さんは良いとしてもお父さんは千年平社員として働かなければならなくなり、その重大なことに願いが叶ってから気づいたお父さんは、一生の不覚だと嘆きに嘆き途方に暮れてしまった。命が欲しいばっかりに取り返しのつかないとんでもないドジを踏んだものだ。嗚呼、救いようのない途轍もなく間抜けなお父さん・・・
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