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沖野のスマホに熊さんから電話が来たのは、家に帰って、ほんの一瞬だけ仮眠して、ふたたび出社しようとしたそのときだった。
『あ、沖野ぉ? ごめん、ちょっと助けてほしいんだけど』
「なんですか、いったいどうしたんですか?」
『実は、さっき別れた後、横向きにかっとぶ巨大ペンギンを見つけてさぁー。“おおおー、やっぱ俺が見たのはホンモノじゃん!”ってしつこくおっかけたんだけど、正気に戻ってよくみたらパトカーだったのよー。お巡りさん、俺の説明信じてくれなくて、もう2時間不審人物扱いされてるんで、お前から説明してくれるー?』
「…………」
――あとさあ、時間までに出社できそうにないんだよね。すまないけど、俺の持ってる仕事、やっぱ少しヘルプしてくれると……
熊さんの声がまだ聞こえているが、沖野は脱力しきって、スマホを耳から離してしまった。
熊さん、俺もつきあいますよ。もうあのブラック会社はやめて、新しい会社に踏み出しましょうよ……。
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