お姉ちゃんは小人を飼っている

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「桃、見て、これ桃よ」  ママが寝る前にスマホを見せて言った。スマホの画面には赤ちゃんがうつってて、よたよた歩いてる。  あ、横にいるのは小さなお姉ちゃんだ。そうか、この赤ちゃん、私なんだね。  赤ちゃんの私はママに向かって歩いてる。でも、少し進むとすぐにこけちゃう。  それでも顔は笑ってて、何度も何度も立ち上がってはママに向かっていく。  そうか、私って歩くのもへたくそだったんだなあ。もう、いやになっちゃうよ。  そんなことを思っていたらママが言った。 「桃はこのころからずっと頑張りやさんだったのね」 えっ…… 頑張りやさん? 私が? 「お姉ちゃんみたいに器用じゃないけれど、桃、あんたは頑張りやさんよ。絶対にできるまであきらめないじゃない? ほら、自転車だってあんなにこけてケガしたのに、乗れるようになったでしょ。ほら、このときも」  動画を数個スクロールするとまた別の日の赤ちゃんの私が映って、また笑顔でママに向かっていく。あれ? 今度はこけないよ。  よちよちよたよた進む私に、「頑張れ頑張れ」と、ママやパパ、お姉ちゃんからの声が飛ぶ。  そしてついに画面の私はママにたどり着いて、ギュッと抱きしめてもらった。  スマホを置いたママは、また私の手を取ってさすった。 「桃の中には頑張りやさんが入ってるんだね。ママは頑張りやさんの桃がだーいすき」  ママは、さっきの赤ちゃんの私にしたように、私をギュッて抱きしめた。 そうか、私の中にもいたんだ。 頑張りやさんの小人が……
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