お姉ちゃんは小人を飼っている

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 次の日、パパは「練習いくぞ!」って言わなかった。  でも、私は公園に行ったよ。  鉄棒を握ると、やっぱり手のひらにできた豆に当たって痛かった。でもそんなこと言ってられない。だって運動会まで一週間もないんだから。  絆創膏(ばんそうこう)を貼った上にハンカチも巻く。これで大丈夫。  宿題を終えたお姉ちゃんも来てくれた。 「おへそを鉄棒につけて」 「足でもっと蹴って」 「腕を伸ばしちゃダメ」  何度も聞いたアドバイスは、私ももう覚えてる。 蹴って、蹴って、蹴って…… その度に、ドサッと地面に落ちる音だけが響く。  ちょっと小人さん、お姉ちゃんのポケットの中にいるんでしょ?  黙って見てないで、少しは手伝ってくれてもいいのに……  何回目かの時、足が鉄棒の上まで上がって体が一瞬止まった。 あっ……  そのまま足が鉄棒に引っかかればよかったんだけど、足はまたもとに戻っていって、ドサッと地面に落ちた。 「おしいっ! 桃、今のすごくおしかった! ああっ、もうちょっとだったのにっ!」  お姉ちゃんが駆け寄ってくる。うん、私も、今のは何だか良かったような気がする。  今の感じでもう一度!   その後も何回か惜しいところまでいったんだけど、成功とまではいかなくて、小人も手伝ってはくれなくて、結局その日も逆上がりは成功しないまま終わった。  あの時、小人がちょっとだけ足を持ち上げてくれていたら、成功したんだけどなあ。 お姉ちゃんは小人を飼っている。 たぶんだけど……  その夜、私は熱が出て、それから二日ほど学校を休んだ。
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