お姉ちゃんは小人を飼っている

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 いよいよ一年生の逆上がりが始まった。  ピッ タタタッ  笛の合図で最初の四人が走り出すと音楽が流れ始めて、グラウンドは静かになった。  タタタッと走る足音だけ聞こえる。  クルン クルン クルン クルン  最初の四人は全員、一回目で逆上がりを成功させて、向こうへ走り抜けていった。  パチパチと拍手、そして歓声が湧き上がる。  ピッ タタタッ  笛の合図で次が走り出すと、またグラウンドは静かになる。あ、一人、一回目を失敗した。「頑張れ!」と声がとぶ。すると二回目で成功して、拍手の中、向こうへ走り抜けていった。  ピッ タタタッ ピッ タタタッ  順番が近づくにつれて周りの音はどんどん聞こえなくなっていく。誰が成功して誰が失敗したかもわからない。  ドクドクドクドク、反対に心臓の音はどんどん大きくなっていくよ。私、どうしちゃったんだろう。 「次だね、頑張ろうね」  みきちゃんの声にハッと前を見ると、私の前に並んでいたはずのみんなはもういなくなっていて、グラウンドの真ん中で鉄棒を回っていた。  誰もいなくなった私の前を風が通って前髪が揺れる。  鳥肌が立つ。  手ににじんだ汗を、体操服で拭く。  小人……お姉ちゃんの小人はどこ?!  ピッ タタタッ  考える間もなく笛が鳴って、私は無意識にみきちゃんたちとグラウンドの真ん中へ駆け出した。
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