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私は一番端の鉄棒を握って足を蹴り上げる。
ドサッと音を立てて体が落ちる。隣でみきちゃんも一緒に落ちる。
あとの二人は成功させて、向こうに走り抜けていった。
二回目の挑戦。今度はゆっくり時間をかけて。鉄棒を握り直す。
腕で鉄棒をしっかり引きつけて
おへそを鉄棒からはなさないように
足を高く蹴り上げる
何度も聞いたアドバイスを、頭の中で繰り返す。
えいっ!
蹴り上げた足は、前の公園の時みたいに高く上がって鉄棒の上で一瞬止まり、またゆっくり戻ってドサッと落ちた。
二回目で成功させたみきちゃんは、「桃ちゃん、頑張って!」と言って、向こうに走り抜けていった。
グラウンドの真ん中には私一人になった。歓声が聞こえるはずなのに聞こえない。
「桃、頑張れ!」
突然、耳にお姉ちゃんの声が届いて、三年生の席のお姉ちゃんが目に入った。
あっ、小人!
お姉ちゃんの帽子から飛び降りた小人が、こっちに向かって走ってくる。
良かった。これで逆上がりができる。
でも、私はなぜかその小人が来るのを待ってはいけない気がした。あんなに手伝ってほしかったはずなのに。
だって、私の中にもいるんだから……
頑張りやさんの小人が……!
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