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夜になり、大川に架かる両国橋は花火見物の人手で、大変な賑わいだった。
綾姫様と元鼠は、浴衣姿に団扇を手に両国橋から夜空を見上げていた。
「まだかしら?早く花火が打ち上がらないかなあ……」
「もうしばらくですよ。花火が打ち上がったら、玉屋~!鍵屋~!って、叫ぶんですよ」
「うん?なあにソレ?おまじない?」
「屋号ですよ。花火を見物しながら屋号を叫ぶのが粋な江戸っ子って、もんです!」
「へえ、そうなの?じゃあ私も、粋な掛け声をかけなくちゃ!」
姫様は楽しそうに瞳をキラキラと輝かせた。
活き活きした表情に抜けるように白く美しい肌。
夜目にもハッキリ見える可愛いらしい仕草。
「綾姫様……?最近、キレイになった?」
「え?なあに?」
元鼠の呟きに、姫様が聞き直した瞬間。
ヒューンン!
ドーーーンン!!
パチパチ!!
「あ!花火が上がりやしたぜ!!」
「あら、本当!」
ちょうど打ち上がった花火を、照れ隠しに見上げる元鼠小僧。
「玉屋~!」
「鍵屋~!」
綾姫様と元鼠小僧は声を弾ませ、とても嬉しそうに、団扇を掲げて天空の大輪に掛け声をかけ続けた。
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