姫!くせ者でござる!

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「お前さん、今日も元気に行ってらっしゃい!」 「おう!なるべく早く帰ってくるぜ!」 その頃、町人長屋ではすっかり町方の生活が板についた姫様が、これまた真面目に鳶職の半纏を着た元鼠小僧を送り出していた。 「いやあっ、姫様にこんな下々(しもじも)の暮らしはお辛いと、おいらも申し訳なくて……」 「あら、そんなことないわ!私も最初の頃より、色々と修練を積んだもの!」 「確かに最初の頃は、米を研がずにそのまま炊いたり、味噌汁に大根を丸ごと入れたり、なさってましたね。それに比べりゃ、たくわんを切らずに丸ごとおかずに出すなんざ可愛いもんすよ!」 姫様は育ちが良いから、ケチケチせずに何でも丸ごとが好きなんだな、と元鼠は心底、感心していた。 「おっといけねえ!今夜は両国の花火があるんだった!姫様、一緒に見に行きませんか!?」 「え?花火?うん、行く!行く!」 お菓子をやめて、朝からシャキシャキ働くようになった姫様は、少しほっそりとなって、大人ニキビもすっかりよくなっていた。 元鼠を手を振って見送ると、嬉しそうに夜になるまで、掃除洗濯針仕事に精を出したのであった。
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