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「え?それで、本当に捕まえたの!?」
それから2日目の深夜。
「姫様、乳母殿には内緒で、そ~っとついて来て下さい」
と、宿直の家来が綾姫を起こしにやって来た。
「鼠小僧に会えるの?行く行く!ちょっと待ってて!」
姫様はばあやさんの目を盗んで食べていたレアチーズケーキを丸呑みにすると、慌てて急須のお茶で流し込んだ。
手早く手鏡で身だしなみを整え、艶やかな蝶柄の打掛を羽織り、足取りも軽く家来について行った。
「足元が危のうございます。お気をつけて」
「平気平気!地下の座敷牢に行くんでしょ?子供の頃、ばあやに何度か放り込まれたことがあるからこのくらいへっちゃらよ!」
石造りの階段を下りる姫様の足元を、提灯で照らす家来に姫様は豪快に答える。
「は?乳母殿が?何ともはや、スパルタな!姫様は一体、何をなされたのですか!?」
「うん、1度目は昼寝していた母上の顔に墨でおヒゲを描いて、2度目は昼寝していた父上の髷をカミソリでちょん切って、3度目は──」
「もう、もう結構でございます!それにしても、昼寝ばっかりしてるな、殿たちは……」
若い家来は、お家の行く末に若干の不安を感じながらも、姫様を地下の座敷牢まで案内した。
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