姫!くせ者でござる!

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陽に焼けた浅黒い肌に、意志の強そうなキリリとした形の良い眉。 裏街道を歩いているとは思えない、真っ直ぐな澄んだ瞳が、綾姫を射抜いた。 「最初の夜にこのお屋敷に忍び込んでから、ずっと天井裏からご無礼ながらお姫様を拝見しておりました。お家の事情も色々とお察し致します。ばあやさん何ぞは、『姫様が若くてツヤツヤのうちに玉の輿に乗っていただかねば、藩が潰れる!』などと口走っているのを聞いた時には、姫様が気の毒で、気の毒で……」 再び俯いて、むせび泣く鼠小僧に姫様もまたため息をつく。 「やっぱり、ばあやなら言うと思ったわ。でも、あの……天井裏からって、わらわが毎晩ケーキ食べてたのも見てた?」 それはさすがに恥ずかしいな、と姫は俯く。 「姫様……あんた、本当にそれでいいんですかい!?」 「え?いえ、いいも悪いも、大人ニキビもできちゃったし、さすがに夜食に脂肪分の豊富なお菓子は控えめにしようかなあ、と……」 「あっしは、南蛮菓子の話をしてるんじゃござんせん!」 鼠小僧は牢に繋がれている自分の立場も忘れて、床を手のひらでバン!と叩いて熱く訴える。 「家だの、藩だの、そのなハンパなものの思惑に乗って利用されて!一生をバカ殿に仕えるなんて、あんたみたいな天真爛漫な天女みたいなお姫様には、できっこねえ!!」 「──でも、どこの藩の姫も、人生そんなものだし……」 綾姫がしどろもどろに言い訳していると、鼠小僧は何かを決意したように牢の中で、すっくと立ち上がった。
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