27人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「姫様は、さっきおいらのことを偉いとおっしゃっいましたね」
「え?う、うん」
綾姫はしゃがんだ姿勢のまま、キョトンとして鼠小僧を見上げた。
「困っている人々に分け与えるなんて、と──。それなら一言、姫様もおっしゃってください。私も困っている。助けてほしい、と……。そうおっしゃっていただけたなら、憚りながらこの鼠小僧次郎吉、何が何でも、姫様をこの牢獄みてぇな屋敷から見事盗み出してご覧に入れやすぜ!!」
「わらわを……ここから……?」
「へい!」
「でも、自分が牢獄に捕まっているのに、どうやって?」
「もちろん!蛇の道は蛇です!」
鼠小僧は自分の髷にサッと、右手を差し入れると先の曲がった黒い金具を取り出す。
そして、金具を座敷牢の錠前に差し込むと、かちゃんと音を立てて扉を開けてしまった。
「うそ!こんなに簡単に出られるなんて、この屋敷のセキュリティはどうなっているのよ!?」
「まったくですぜ!12回連続侵入、楽勝でした!警護のご家来衆の数もケチってるんじゃないですかね?」
鼠小僧は、偉そうに腕組みをするとウンウンと、頷きながら納得している。
最初のコメントを投稿しよう!