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「でも、どうしてそんなに危険を冒すの?お金もないこんな屋敷に何度も──」
「そいつは……」
「それは……?」
綾姫の問いかけに、答えを言いよどむ鼠小僧。
2人は、蝋燭の灯りが揺れる地下室で、しばらくの間黙って見つめ合った。
「姫様!何にも言わねぇで、おいらに盗すまれてください!!」
「今度は何にも言わなくていいの?」
「へい!」
「ふふ……。本当はね、私婚儀なんてしたくない。とってもイヤな相手なの。だから……」
綾姫はここまで話すと、言葉を切った。
「困ってる私を助けてください……」
「承知しました。この鼠小僧次郎吉、命に替えても綾姫様を見事盗んでみせやしょう!!」
そう言うと、彼は胸を張り右手を差し出した。
綾姫もしゃがんだ姿勢から、ゆっくり立ち上がる。
そして、鼠小僧の手を握るとニッコリ微笑んだ。
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