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(俺は死ぬのか、じいちゃん、ばあちゃん、ごめん) 時間が止まっているようでもあり、永遠に続くようでもあったが、実はほんの一瞬だったのかもしれない。 やがて前方に黒い点が見えたかと思うと、それは次第に大きくなり丸い黒い口を開けたようであった。 その口に吸い込まれると思った次の瞬間、地面に投げ出されるような衝撃を肩と背中に受けながら、無意識に受け身をとるように回転していた。
気がついたときには、地面に仰向けに寝ていた。眼を開けると、見えるのは青い空にぽっかり浮かんだ白い雲だった。 手や腕には、熱い砂のあたる感触がする。上半身を起こしながら周りを見わたした。 開けた土地、砂と岩と所々に低木や草むらが見える。 そんな荒れ地が2、3キロ先にある丘の連なりまで続いていると思われた。 すこし離れたところでもう一人が同じように体を起こしているところが見えた。
「上代、大丈夫か」俺は呼びかけた。
「痛ってー。頭ぶつけた」「九十九か、ここどこだ。俺たち、いったいどうなったんだ」
「わからない。 俺たちさっきまで、学校の屋上にいたはずだが・・・」
体をさすりながら確認してみたが、どうやら怪我はないようだ。
その時、正面の荒れ地の左側から、角笛のような高い大きな音が、長く響いた。 約500メートルくらい先には、大勢の人が塊になって右に向って進んでいる。 奥まで見えないので分からないが、何百人もいるように思われた。 よく見るとがっちりした巨大な体には、黒い毛がびっしり生えている。熊が二本足で歩いているようにみえた。 右手には大きな片刃の剣を持っている。 他の者も同様に巨大な猿のように見えるものや、ライオンのように見える者など様々であるが、棍棒や太い鉄棒、刀などで武装している。
もう一方の右側を見た時に、高い鐘の鳴るのが聞こえた。 右側には多数の人間が数十メートルにもわたり何列にも整列しており、その鐘の音を合図に一斉に行進を始めた。 黒い鎧のようなものを着て、手には木製の丸盾を左に、剣を右手に持っていた。 こちらも終わりがどこなのか分からないが、数千人はいるのではないかと思われた。
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