1-1 戦場

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 左右から両軍?が近づいていき、お互いの距離が300メートルぐらいになった時、人間側の行進の後ろから、何百本もの矢の一斉射撃が行われ、人間の頭を通り越した矢は、獣の姿をした集団の頭上に雨のように降り注いだ。 獣の集団は、聞いたことのないような悲鳴を上げながら頭をかばっていたが、彼らの厚い毛皮には容易に矢を通すことは出来ないようだった。 これはかえって彼らの闘争心を刺激してしまったようで、ものすごい怒声をあげながら、一斉に人間の方へ突進を開始した。 人間側も隊列を崩さないように注意しながらも、前進速度を速めた。 その後方からは、弓による一斉射撃の第二波が行われた。  俺たちは、状況もつかめず呆然と見ていたところに、「シュッ」と突然風切り音が聞こえたかと思うと、俺の足下の砂に何か棒のような物が突き刺さった。 棒の先には、鳥の羽のような物が付いている。 流れ矢がここまで飛んできたようだ。 俺は思わずその矢を地面から抜き取ると、鏃を確かめて見た。 その鋭い鉄の先端はとても飾りものとは思えなかった。 「え、これって本物じゃないか?」 「何だこれは、まるで戦場のようだぞ。 映画のロケでもやっているのか」 「いや、本物の戦場だ」上代は俺から受け取った矢を見ながらこたえた。 目を懲らしてみると、500メートルほど先では、多くの人々と獣の群れが激突し混戦になっているように見える。 人間側は槍で獣の胸を突き、剣で切りつけていた。切り口からは、赤い血が勢いよく噴き出し、獣は苦痛の咆哮をあげるが、それでも勢いは止まらず、その丸太のような腕を振り回し、人間を盾ごと吹き飛ばして行った。
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