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1-1 戦場
その空間はまばゆい光に包まれていた。 体が宙に浮いて、どこが上か下かも分からない、落ちているようでもあり、上っているようにも感じる。 ただある一定の方向に、まるで光りのチューブの中を流されているようには感じる。
(俺はどうしたんだ。そうだ、上代が光りの穴に吸い込まれそうになっていたのを、とっさに腕をつかんで引き戻そうとしたんだ。でも踏ん張れずそのまま俺まで引き込まれたのか。何をやっているんだ、俺はまた助けることができなかった)
上代を探そうと周りを見渡したが、光がまぶしくてどうなっているのかよく分からなかった。 無意識に首からかけていた赤いお守り袋を握りしめた。
俺は九十九翔(つくもかける)、普通高校の3年生だ。 両親は5年前に交通事故で死亡、今は祖父母と暮らしている。 6つ上の兄は、アメリカで暮らしている。 成績優秀だった兄といつも比較され、劣等感を感じながらも、目標もなく何となく暮らしている。 一緒に巻き込まれた男は、上代裕樹(かみしろゆうき)、俺の同級生だ。 成績優秀で常に全国模試でトップテンに入る。 その上、ガリ勉の運動音痴ならばまだ可愛げがあるが、身長180センチでイケメンしかもスポーツ万能という、とても嫌なやつだ。
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