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今度は、秋野の様子をうかがう。
意識して見ていると、また発見があった。
とにかく、表情がくるくる変わる。
まじめな顔をしている。なのに、その次の瞬間には、変顔をしていたりする。
鼻歌を歌っている。
何なんだ。
それによく笑う。それも大口を開けて。
そして、川本が戻ると、やっぱり目で追っているのだ。
そんな無防備な顔するな。みんなにバレるだろ。
ああ、もう。言ってやらないとだめだ。
「何や秋野。川本のこと、気になる?」
俺は極めてさりげなく聞く。
「何のこと? 別にそんなことないよ」
「ふうん。気が合ってると思うけどな」
「そ、それだけだよ。友達のノリ」
秋野は慌てている。明らかに動揺している。
俺は息を吸い込んだ。
「告ってみれば? 変化があるかもしれんぞ」
「だから、そんなんでないって」
秋野は自分の席に、走って戻って行った。
これで何か動きがあるかもしれない。
俺は秋野の背中を押してやった。
そうだ。
仲間のいじらしい想いをくんで、告白するきっかけを作った……と思う。
人助けをしただけだ。
いつもと同じことをした。
なのに、胸の中がヒリヒリするのは、何でだ。
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