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1.
昔からそうだった。
「佐山くんて、いい人やね」
「佐山くんに任せておいたら大丈夫やね」
いつだって、学級委員。
小学校の頃は、みんなが認めてくれているんだと嬉しかった。
それも中学ぐらいになると、意味合いが違ってくる。学級委員なんて、要するに何でも屋だ。みんな面倒くさいことは、やりたくない。それで、自分にお鉢が回ってきてるのは十分承知していた。
でも別に、人のため、クラスのために骨を折るのは苦じゃなかった。そのはずだったのに。
入社して1年たった。
商事会社の営業部で、何とか仕事がわかって来たか、というところだ。同期入社の川本浩平は同じ高校のサッカー部同士だった。
川本は、俺の「学級委員人生」をフンと鼻息荒く一蹴した奴だった。
いつも強気で、主張をねじ込んで、周囲と衝突した。俺はいつもの性分で、フォローに当たった。すると俺にも「ケツの穴の小せい奴」と向かってきた。けれど、川本は自分勝手に言っているのではないことがわかってきた。後々、チームのためになることだった。
川本はフォワード、俺はミッドフィルダー。部内でもポジションと同じ役割を果たした。俺たちは、お互いの特性を理解していた。
入社式で再会して驚いた。
「川本は次男やし、てっきり東京で就職すると思ってたぞ」
「ま、いろいろあるんやって。それより、早速同期会しよっぜ。幹事よろしく」
「え? 同期会って、俺まだ誰が誰だか」
「おせーよ。商社マンは先手必勝。みんなに話はつけてある。あとは、セッティングな」
川本の物怖じしない性格は、変わっていない。たちまちキーマンとなった。
同期の女子の中で、川本といつも漫才の相方のように、冗談を言い合っている子がいる。秋野美羽だ。
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