第5話 僕を殺した僕と、殺された僕 (1)

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第5話 僕を殺した僕と、殺された僕 (1)

  「なんだ、イラスト描いてんじゃなかったのか」  リビングのテーブルでプリンを食べながら舞彩を迎えたのは、兄の理だった。 「新ちゃん、いないみたい。変ね、お昼の時はいたのに」  舞彩はそう言うと、ソファーの上で携帯をいじり始めた。僕がリビングの中を移動しても、二人は気配すら感じていないようだった。  ――仮に僕が幽霊だとして、僕は一体、どこで死んでるんだ?  見たところ二人に兄弟の死を嘆いているふしはない。ということは僕は誰も知らないところで事故か何かに遭っていて、魂だけが家に帰ってきたのだろうか。  早く身体を探しに行かなくちゃ、そんな思いに浮足立った、その時だった。 「あ、新ちゃんの声だ」  突然、舞彩がそう言って携帯の画面から顔を上げた。まさか。僕は声を発していないし、発したところで聞こえないのは検証済みだ。 「なんだい、外にいたんじゃないか」 「変だなあ」  兄と妹のやり取りに僕が透明な首をかしげていると、やがてドアが開く音と上がり框に荷物を置く音とが聞こえた。 「ああ、疲れた。まさか買い物中の母さんに出くわすとは……つくづく不覚だったな」 「そのくらい運ぶのが普通でしょ。……冷蔵庫にプリンの残りがあるから、食べていいよ」  玄関から漏れ聞こえてくる会話を聞いた僕は、心臓が止まりそうになった。母さんと喋っているのは……僕だ! 「あ、やばいな。これ新の奴だったか」  兄の理がプリンを食べる手を止め、ばつの悪そうな表情を作った。 「後でアイスかなんか買ってあげれば?新ちゃんの機嫌なんて簡単に治っちゃうって」  勝手なことを言いやがって、そう思いつつ、僕は幽霊であるにもかかわらずそそくさとソファーの後ろに身を潜めた。
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