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***
とまあ、ここまでの流れはいいのだが。
家に帰った後、瑛は非常に難しい顔をして相談してきたのである。というのも。
「さいかちゃんと、遊べるのは嬉しいんだけど」
「うん?」
「さいかちゃん、おままごとがしたいって言うんだよ。ぼくに、お父さんの役をやってほしいんだって」
「あー……」
私は理解し、同時に非常に申し訳ない気持ちになった。幼稚園児の女の子としては、実に妥当で可愛らしい提案である。問題は。
「お父さん、ってどんなことをすればいいのかなあ」
ほんの半年ほど前、私は夫と離婚。シングルマザーになったばかりであったのである。つまり息子には、お手本とするべきお父さんがいないのだ。
いや、離婚前にいたにはいたのだが、まだ幼い瑛がどれほど父親のことを覚えているのかどうかは怪しいし、あまり手本にできるような人物でもなかったのは事実である。
「そ、そうねえ……。お父さんって言っても、いろんなお父さんがいるもんね。あんまり難しく考えなくていいんじゃないかな。瑛が思ったままのお父さんをやればいいと思うし、なんならテレビに出てくるお父さんを真似してもいいし……」
「てれび……」
その時。私が適当につけたテレビが。よりにもよって、ゴシップ系のワイドショーだった。
しかもその内容は――“大家族、四児の父!まさかの七股疑惑に妻激怒!”というものである。平仮名とカタカナしか読めずとも、年齢の割に賢い息子は、どうやらコメンテーターが噛み砕いて説明する内容がおおよそわかってしまったようで。
「あんなかんじ?」
「あれは絶対真似しちゃだめ!浮気するお父さんとか、ダメのダメのダメだからー!!」
私は全力で止める羽目になるのである。
とりあえず、世の中ちょっと子供達の手本にならない大人が多すぎやしませんかね。
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