2人が本棚に入れています
本棚に追加
***
それから、約六年後。
「ほーら、お父さんだぞー!」
シノアがだっこする赤ん坊に、ロイは声をかけていた。べろべろばー、とおどけて見せれば。わんわん泣いていた娘はきょとんとした顔になって、やがて弾けたような笑い声を上げることになる。
もうすぐ一歳になる娘の笑顔を、幸せそうに見つめる母親のシノア。そして彼女は今度はそっと――ロイの膨らみ始めた腹を撫でて、同じように声をかけるのだ。
「こっちもね!ほーら、お父さんですよー!元気に生まれてきてくださいね、私達の可愛い息子ちゃん!」
滅ばなかった世界で、かつての少年と少女は父となり母となり、そしてまた母となり父となる。
自分達だけが知る、最高の幸せを享受しながら。
最初のコメントを投稿しよう!