De belles fleurs rien que pour moi

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 美大の教授とその教え子の、恋と呼ぶには拙すぎるほんのひとときの慰めあい。  ちいさな胸がコンプレックスだった彼女を悦ばせようと、彼は徹底的に胸を愛撫した。  仕掛け絵本の並ぶ研究室の片隅で興じる男女の戯れは、身体を重ねるものではなかった。襲われても構わないと言い切った彼女だったが、研究室で処女を捧げられても困るからと、彼は彼女が卒業するまでお預けを決めた。それまでは、俺がたくさん君を気持ちよくしてあげるから、と年上の余裕を見せて、言いくるめて。  美しい花、と呼べば恥ずかしそうに顔を朱色に染め、素直に身体を差し出す彼女に、彼は夢中になった。  彼女も彼の手によって、その名のとおり美しく淫らに花ひらいていく。  言葉足らずな教授の愛撫に、教え子は慣らされて、胸だけで達せるように開発させられた。  卒業するまで自分の傍にいられるのならば、その処女を奪ってやると、強引な約束を結ばせて。  けれどもふたりは、思いもよらない形ではなればなれになってしまった。  ――海老原美花の死によって。
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