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好きとか、愛してるなんて言葉は一度も使われていなかった。
身体を弄ばれているだけだとも思った。
それでも自分は彼の傍にいたいと思ってしまった。知らない官能的な快感を彼に教えられて女になっていく感覚が誇らしかった。最後まではけしてしてくれなかったけど、卒業まで一緒にいられたらって約束に縋ることにした。
周りから見たらきっと歪な関係だっただろうけれど美花は幸せだった。
……幸せだと、思いたかった。
大学から部屋に戻ってひとりになると、孤独に襲われた。
彼は自分なんかいなくても変わらないのに……自分ばかりが彼に依存していく錯覚に陥った。
お酒を飲んでいるあいだは幸せな気分がつづくから、ひとりで部屋にいる夜はお酒に逃げていた。
製作に夢中になっているあいだは彼のことを考えなくて済むからと、眠らなくなった。
身体は悲鳴をあげているのに、心はそんなことないと無視していた。
具合が悪いんじゃないかと門田に心配されて、そういえばよく:眠れていない|なと思い出し、心療内科で眠剤を処方してもらった。眠らない、という現象を眠れない、にすり替えてしまったのは、きっと彼に呆れられたくなかったから。
ダンボール製作で等身大のカボチャの馬車を必死になって作成して、完成した夜。
いちばんに見てもらいたいひとが傍にいないことに絶望して、苦しくなって。
早く眠って明日になればいいと、酔っ払ったあたまで処方された眠剤をぜんぶ飲、んで……?
――朝が、永遠に訪れなかった。
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