153人が本棚に入れています
本棚に追加
カボチャの馬車で愛されました。
大量飲酒及び薬物の過剰摂取による嘔吐。
そこからの吐瀉物による窒息が直接的な死に繋がったのだろうと警官は門田に伝えた。
自殺をするつもりはなかったのだろう、完成した立派なカボチャの馬車がそれを物語っている。
けれども警察は自殺と断定、芸術家の卵であった彼女は自ら生命を絶ったことにされてしまう。
助けを呼ぶ暇も与えられず、気道を詰まらせ苦しみながらこの世を去った二十歳の美大生、海老原美花の変わり果てた姿が発見されたのは課題〆切日の翌々日だった。
真面目な彼女が授業を無断欠席した上、単位に繋がる大事な課題提出日まですっぽかす、二日経っても連絡がつかない。
実家で暮らしているという老齢の親をはじめ、心当たりのありそうな場所に問い合わせてもなしのつぶて。
もう大人だし、心配するほどのことではないと大学側は突き放した反応をしていた。けれど、なぜだか胸騒ぎがするこの異常事態に門田は動いた。杞憂でも、彼女の姿をこの目で確認したかったから……
警察の手を借り、彼女が暮らすアパートの扉を開いた。饐えた臭いが充満するワンルームの奥に、彼女はいた――血と汚物にまみれて冷たくなっている状態で。
最初のコメントを投稿しよう!