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カボチャの馬車に拉致られました。
女の子ならば誰もが憧れる王城の舞踏会。
今年は結婚適齢期の王子様のために、国中の女性に招待状が届けられた。
せっせと家事に勤しんでいたシンデレラのところにも。
だけど、現実はそう甘くない。
「あなたみたいなお胸のちいさい娘なんか、誰からも相手にされなくてよ」
「舞踏会にはあたしたちだけで充分、あんたは屋敷で床掃除でもしてな」
――おっしゃるとおりです、お義母さま、お義姉さま。
言われなくてもあなたたちと一緒に舞踏会に出るという選択肢はありませんでしたわ。
だってこのあと、物語のなかのシンデレラは、魔法使いに助けられて、ひとり華麗に王子様の心を掻っ攫っていくんですもの。
赤青黄色、ハデハデな原色のきらびやかなドレスに身を包んだ義姉たちは豊満な胸をこれでもかと下品なまでに揺らしながら、みすぼらしいお仕着せを着たシンデレラを一瞥し、つまらなそうに鼻を鳴らす。
「まぁいいわ。どうせあんたみたいなちんくしゃがひとりいなくても誰も気にしないでしょうし」
「王子様だけではないわ、素敵な殿方がたくさん招かれているのよ。わたくしの娘たちならきっと良縁を手に入れられるはずよ!」
「お母さまこそ、舞踏会で新しい恋を探されるつもりではないの?」
「あらやだ、彼が亡くなって三年も経っていないのに何を言っちゃうのかしらこの娘ったら」
きゃいきゃい女子高生のように姦しく騒ぐ継母とふたりの義理の姉を前に、シンデレラは仏像のようにじっと佇み、くだらないやりとりから耳を塞ぐ。
たしかに父親が生存していた頃は、ここまでひどくなかった。とはいえ、転生前に絵本で読んでいた童話『シンデレラ』の世界とさほど変わらないのは事実である。実母が亡くなり後妻として迎えたのがあの継母とふたりの血のつながらない姉、というのも彼女が物語で得た知識とまるきり同じだったのだから。
「それじゃあね、シンデレラ。留守番頼んだよ」
継母とふたりの義姉は無言で突っ立っているシンデレラを嘲笑しながら、屋敷を出ていった。
残された彼女がよしっ、と心のなかでピースサインしていることなど、気づくことなく。
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