お客

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「そう?なんかさぁ、若いしもっと楽しんだ方がいいと思うのよねー」 「そっすねぇ」 この人けっこうおばさんなのか? 「…こら!なにしてんだよ」 旦那が戻ってきた。 「私が出てきたのよ。なんか仕事紹介してあげようよ」 「え?なに、そんなしゃべった?」 「うん」 「…いやでも、あんまり長居したら怒られるよね?」 「…いや、めちゃ汚かったって言えばいいし。まだ掃除終わってねーし」 「…まじで汚くしてごめん」 「…え、まじ汚かったんすかここ?」 「…掃除したつもりだけども」 「あなたそういうのいいから!仕事紹介してあげよーよ」 「仕事ねぇ。えーと、銀行は?」 て、この人嫁の言いなりなのな。 「俺は学がないっすよ」 「だって。でもホストはだめよ」 「…そうだ。ライブハウスは?音楽聴く?」 「えー、まぁ」 「俺の弟がいるからさ、そこの受付やらない?みんなすぐ辞めるんだって」 「それ、どんなきつい仕事なんすか?」 「え?きつくないよ。給料ここより下がるけど、楽だし。あと、うちの事務所の掃除とかは?四季さん」 うちの事務所?2人で話している。 「いーねぇ!掃除してよ。金払うから」 「まじすか。まじ優しいっすね」 たぶん、これは口だけだ。適当に聞いておこう。 「あなた、名刺」 「えっ、と…はい、これが俺の。金井虎一郎(かねいとらいちろう)で、こっちが四季さんの。仕事したくなったら連絡ちょうだい」 え… なん? 「ほ、ほんとの話?」 「そうだよ。それより、君の名前教えてよ」 「あ、え…っと」 「うん」 「米田、礼央…」 「へー!かわいい名前ねぇ」 「ここの人とも話ししないとね。じゃ、四季さん着替えてきて」 「はぁい」 嫁は着替えもらってトイレに。名刺もらうの、はじめてだ。しばらく見ていた。 「あ、…延長になるよね?お金はどうしたらいい?」 「いい、です…掃除、途中だし…」 「そう?ごめんね、掃除中断させて」 「はい着替えたー帰るよー」 「じゃあ、連絡待ってるよ」 仲良く帰って行った。この名刺…どうしよ。
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