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応援
――次の日も之朗は午後からおじいちゃんに見守られながら波乗りの練習をしていた。
でも、
「ふ〜ダメか」
やれどもやれども右に左に後ろにと失敗を繰り返す。一生できない気もするし、夏休みを無駄に使ってるようでやる気もなくなってくる。
「······やっぱり無理なのかな」
落ち込んでいると後ろから、
「フレー、フレー、シ・ロ・ウッ!」
「はぁ〜」
「フレー、フレー、シ・ロ・ウッ!」
「もう止めようかな······」
「フレー、フレー、シ・ロ・ウッ!」
すると振り向いて細目になり彼女の元に、
「フレー、ふにゃっ」手で顔を掴んだ。
「うるさいよ、さっきから」
「んー、んんーっ!」
ギプアップと言わんばかりに手足と羽をバタ付かせているので、もういいだろうと手を離した。
「ぷはーっ、もうっ、妖精を窒息死させる気?」
「じゃあ静かに······」
気配を感じ、後を向くと、
「お前さっきっからなーに言っとるだ?」
妖精が見えないため、おじいちゃんには孫が一人で話しているのを見て気になって来たのだ。
「あ、いや、どうすれば上手くなるかな〜って、よ〜しやるぞー」
やる気が無くなっていたが、誤魔化すためにまた海へと入っていく。
彼女の応援がありながら今日も成功せず、練習して3日目、
「――もう、止めてやるっ!」
海に来るも之朗はボードを投げた。
「シロウ······」
「これ、投げるでない」
おじいちゃんに注意され、砂浜に座り砂に埋まっている小石を投げ出す。しかし、その眼は他のサーフィン達を見ていた。なので思い切って、
「どうしてそんなムキになってまで、波乗りしたいのよ」
「たいした理由じゃないよ······」
彼は訳を話しだす。それは夏休みが始まった頃、之朗はお父さんと二人で河原子に来た。
サーフィンが得意なお父さんが「お前にもサーフィンを教えてやるよ」と言われて喜んで練習するが何回やっても失敗を繰り返していたら、
「あれ? どうしてだろう」
アドバイスを貰おうと駆け寄ると、
「お父さんどうすれば」
「また失敗か〜、お前は才能ないな〜」
この時お父さんは軽く冗談で言ったつもりだったのかも知れないが、之朗は胸に雷が走ったようなショックを受け、
「······もういいよ」
「あ、ごめんお父さんが」
「このくそ親父っ!」
それ以降お父さんの方から話し掛けてきても無視、あれから一週間くらい口を聞いていなかった。
「――でも親父の言うとおり、皆が簡単に波乗りしてるのに俺は、才能ないんだよ」
ついに顔は下を向き完全に心が折れたと思ったら、
「フレー、フレー、シ・ロ・ウッ!」
彼女はまた応援し始める。
「スカーレット、もういいよ」
「良くない、絶対できるもん」
「無理だよ」
「できるもん」
「無理!」
「できるもんっ!」
言い合った二人はどちらも譲らず、彼は出来ると言い続けるスカーレットに、
「じゃあどうやってだよ?」
「そ、それは······」
「それは?」
「気合いよっ!」
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