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『やり過ぎだよね』 『よく、アイドルとか俳優が結婚したら何とかロスとが書き込む人がいるけど、勝手に脳内で恋をする人って思い込みが激しくて怖いね。あの三人も同じ怖さを感じるよ。つーか、万里子さん、樋口君の子猫を保護してくれていた訳だよね。それなのに、妊娠しているとか噂されて気の毒だよね。あの三人、ほんと恐ろしいよね』  そんなふうに噂される彼女達の事を、あたしは馬鹿だと突き放す事も出来なかった。  だって、苦しいよね。好きな人が他の人を想っていたらショックだよね。  樋口さんは、万里子さんを猫の世話係りとして見ている訳じゃない。だって、あの時、生々しい悲痛な叫び声を聞いたんだもの。万里子ーーーって、胸が張り裂けそうな顔つきで叫んでいたんたもの。  樋口さんは万里子さんという年上の女の子に夢中になっている。だけど、何がいいのかな?  解けない謎が膨張していく。心を巣食うモヤモヤが止まらない。あたしだけじゃなく、みんなが二人の動向に注目している。 『樋口さんと万里子さんが破局したらいいのになぁ』  そうよ。その通りよ。あたしは二人が別れる事を秘かに願っていた。  少しの間、ギクシャクしていた万里子さんと樋口さんだったが、公園で樋口さんが大怪我をした事をきっけに復縁してしまったのである。樋口さんはしばらく入院する事になったというのだ。 『みんな、聞いたぁ? 万里子さんの為に闘ったらしいよ』  樋口さんは痴漢を退治しようとして刺されたらしい。  なんてドラマチックなエピソードなんだ。あたしのクラスの女子は目を潤ませながら興奮していた。 『やっぱり、樋口さんは本気で好きなんだね』 『そうみたいだね。二人の愛は本物だよねぇ。ロマンチックだよね』
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