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4. 私の好みのタイプ、どうなってんの?
はぁ……やってらんないなぁ、もう……。
あ、どうも、鈴木葵です。
乙女ゲームの主人公の親友役です。
前回いきなり冒頭からため息ついていたわけですけど、今日はその理由をね、聞いてほしいわけですよ。
まずは、これを読んでほしい。
去年の12月にリリースされた、うちのイベストなんですけど…
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12月リリース:イベントストーリー
「雪よふれふれ!ホワイト・クリスマス」より一部抜粋
○背景:繁華街
私「もうすぐクリスマスだね」
私「主人公は誰と過ごす予定なの?」
主人公「私は……まだ決まっていないかな」
主人公「葵は?」
私「そんなの決まってるじゃん!」
私「クリスマスっていえばデートだよ、デート」
主人公「えっ、誰と?」
私「この間、合コンで知り合った人」
私「5つ年上で、しっかり者で、かっこいいんだ〜」
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──読みました? OK?
じゃあ、次はこれね。
今年のバレンタインデーのイベスト、はいどうぞ!
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2月リリース:イベントストーリー
「まさかのあの人が登場!?★波瀾万丈バレンタインデー」より一部抜粋
○背景:カフェ
私「うーん……」
主人公「葵、なに見てるの?」
私「チョコケーキの作り方」
私「今度の同窓会のときに、こっそり持っていこうと思って」
主人公「あ、元カレがくるんだっけ?」
私「そうなの! あいつ、甘いもの大好きでさ」
私「そのくせ、それを隠してるツンデレなところも可愛くて……」
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ハイ、読みましたよね?
じゃあ、最後はこれ!
今月リリース予定の、最新イベスト!
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8月リリース予定:イベントストーリー
「心霊スポット!?★真夏にどっきりふたりきり」より一部抜粋
○背景:私の部屋
主人公「えっ、遊園地のチケット?」
私「そうなの! 最近気になってる熱血スポーツ系男子から、チケットを譲ってもらってさ」
私「せっかくだから一緒に行かない?」
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──お気づきですか、皆さん。
ねえ、お気づきですよね?
私! 好きなタイプ! バラバラすぎ!
クリスマス前に「5歳年上・しっかり者の格好いい人」を好きになったと思いきや、バレンタインデーでは「可愛い系ツンデレ元カレ」にチョコレートを渡そうとして、それなのにこの夏は「熱血スポーツ系男子」に夢中って!
ひどいでしょ。
節操なさ過ぎでしょ。
男なら誰でも良いって雰囲気でしょ!
はー、やってらんない!
たしかに私、「恋多き女」ではあるけどさ(主人公に恋のアドバイスをする必要があるため)。
けど、けどさ、この節操のなさってどう思います?
ちょっとひどいでしょ。
もはやイケメンなら誰でもいいって域でしょ。
もうさー、もう少し私の設定決めてくれよ。ほんとにさぁ。
……でもね、ほんとはわかってるんですよ。
私の好みをはっきりさせないほうが、制作側としては都合がいいってこと。
まず、攻略対象者ってほんといろんなタイプがいるのね。
俺様・クール・ドS・ツンデレ・ムードメーカー・可愛い系・オトナ系・闇抱え系……
そんな彼らの共通点といえば「イケメン」。
どんな性格をしていても「イケメン」。
たとえ、好みの顔立ちじゃなくても「イケメン」!
ここ、大前提だし、ユーザーさんたちにもそう認識してもらう必要があるってわけ。
じゃあ、どうやって認識してもらうのか。
そのひとつの手段として、
「誰かに『うわぁ、あの人かっこいい』って言わせる」
ってのがあるのね。
そうすることによって、たとえユーザーさんの好みのキャラクターではなかったとしても「この世界では『かっこいい』と認識されているらしい」ってことをインプットしてもらうわけなのよ。
ところが、この「かっこいい」「イケメン」発言、うちの主人公には言わせにくいんですよねぇ。
というのも、うちの主人公、恋愛に奥手な上に「イイコ」なわけですよ。
だから「外見で人を判断するようなミーハーなまね」はしない。
たとえ、心のなかでは「うわぁ、めちゃくちゃイケメン!!!」って思っていたとしても、口に出しては言わせられないわけですよ。
となると?
「彼らはこのゲームの世界ではイケメンです」って周知する役割を担うのは?
──もうお分かりですよね。
主人公の親友・鈴木葵(恋多き女)の出番ってわけですよ。
私「うわぁ、Aくん、カッコいいね」
私「Bさんってめっちゃイケメンだよね」
私「Cくんって、ほんと素敵……」
と、まあ、こんな感じで「AくんもBさんもCくんも(ユーザーさんの好みはどうあれ)、このゲームの世界では『イケメン』という設定です」っていうことを伝えていくわけです。
ところが、ですよ。
もし、ここで私の「好みの男性像」が決まっていたらどうなるか?
私「あーAくん、カッコいいよね。ほんと、素敵!
私「それに比べてBさんってば、せいぜい『中の下』ってところ?」
私「え、Cくん? ごめん、ぜんっぜん好みじゃない!」
──こんな発言のあとで、ユーザーさんに「全員イケメン」って設定を受け入れてもらえると思います?
無理ですよね。
どんなに立ち絵が素敵でも「Aくんはイケメン、Bさんはそこそこ、Cくんダメ」って思っちゃいますよね?
というわけで、私(主人公の親友)の「好みのタイプ」は設定しないほうが、制作側としては使い勝手が良い!
だって、誰に対しても「イケメンイケメン」って発言できるから!
だから、まあ、最近は「仕方がないのかなぁ」と諦めモードですわ。
ほんとのほんとの私の好みは、ゲームのリリース時から「主人公の職場の上司」一択なんですけどねー
そう、いるんですよ。私好みのドストライクの人が。
「主人公の職場の上司」で、年齢は私たちより10歳も上。
でも、独身。
ありがたいことに独身。
しかも、彼、攻略対象者じゃない!!
つまり「主人公と恋をしない男」なわけですよ!
ね、これ、ワンチャンスあると思いません?
私と上司が恋に落ちる世界線が、きっとどこかに……
……え、来月、職場の上司ルートがリリースされる?
つまり、満を持して「攻略対象者」になるってこと?
は──そうですか!
上司も、主人公と恋に落ちますか!
は──!
しょうがない。
私はユーザーさんが書いた上司との「夢小説」に、「葵」って名前を打ち込んでひとりこっそり楽しみまーす!
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