7.いやいや、それは公式ではないでしょう

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7.いやいや、それは公式ではないでしょう

どうも……お久しぶりです……鈴木葵です…… ……え、なんだか元気がない? そりゃあね、私もいろいろあって心の隙間が空いてますから…… 上司とか上司とか、上司ルートの件とか…… でも、今こうもグッタリしているのはそれが原因じゃないんですよね。 実は、ここのところイベントストーリーでの私の出番が急増していまして。 まさに売れっ子女優さながら、いろいろなルートで引っ張りだこって感じでして。 え? どうして増えたのかって? それがですね、まぁ…いろいろありまして。 まずは、先月のイベントストーリーを読んでもらえますかね。 これなんですけど。    ■□■□■□ 9月リリース:イベントストーリー 「え、スカウト!?★ドキドキまさかの○○体験」より一部抜粋 ○背景:電車の中 幼なじみ「えっ、ファッションショーのモデルにスカウトされた?」 主人公「そうなの。でも断ったほうがいいよね」 主人公「けっこう大きな規模のファッションショーみたいだし」 主人公「私なんかがランウェイ歩くなんておかしな話だし」 幼なじみ「いや、でも…うーん…うーん…」 幼なじみ「…あのさ、せっかくだしやってみたらどうかな」 主人公「えっ」 幼なじみ「だって主人公、昔モデルやってみたいって言ってたよね?」 主人公「そんなの小学生のころの話だよ」 幼なじみ「その小学生のころの夢が叶うかもしれないんだろ?」 幼なじみ「だったらやってみたらどうかな」    ■□■□■□ まあ、素人にランウェイを歩かせるのかよってつっこみはおいておいといて(※)、実はこのシーンがきっかけでユーザーさんたちからクレームがきまして。 なんでクレームになったか、わかります? たぶん、わからないですよね? 実はこれ、「幼なじみくん」のルートじゃなくて、「後輩くん」のルートの一幕だったんですよね。 で、このあとどうなったかっていうと 幼なじみくんに背中を押されてモデルを引き受ける主人公→人伝てにそのことを知って「モデルをやるなんて聞いていない」と拗ねる後輩くん→気まずいままファッションショー当日→実はこっそり観に来ていた後輩くん、最後にステージにあがって主人公に花束をプレゼントして仲直り まあ、ファッションショーのステージにどうやったら観客があがれるんだよ、というつっこみはおいといて── このイベントストーリーが配信されたとたん、一部のユーザーさんたちから、以下のような不満が噴出したわけですよ。 「幼なじみがモデルを薦めたせいで、ふたりがケンカするはめになった。後輩かわいそう」 「後輩に相談しないで、幼なじみの助言で決める主人公ありえない」 「後輩、心せますぎ。その点、幼なじみは主人公の背中を押していいやつ」 ――いやぁ、いろんな意見がありますよね。 で、ここからさらに「行間を読むのが大好き」な方々が現れてですね、 「幼なじみは、前々から後輩くんにムカついていた。だからわざと主人公に『モデルをやれ』と背中を押した。今回ふたりがケンカしたのは、幼なじみの狙いどおり。幼なじみは、さわやかそうに見えるけど、実は闇抱え系だってことが今回のイベストではっきりした」 とか、 「後輩くんは、前々から幼なじみにコンプレックスを抱いていたはず。絶対にそう。後輩くんが可哀想だから、二度と後輩くんルートでは幼なじみを出さないでほしい。絶対絶対共演NG!幼なじみくんもそう思ってるはず!」 いやいやいや。 「幼なじみくんが後輩くんにムカついている」なんてシーンも「後輩くんが幼なじみくんにコンプレックスを抱いている」なんてシーンも、今まで一度もなかったっての! ましてや「幼なじみくんが闇抱え系」って、一部の二次創作でしか出てこない設定でしょうが。 さらに言っちゃうと、後輩くんが拗ねているのは、あくまで「人伝にモデルの話を聞いた」からであって、幼なじみくんが主人公の背中を押したことについては特に描写がないんですよね。 そこをあれこれ妄想して二次創作や夢小説に活かすのは有りだと思うけど、さも「後輩くんが拗ねているのは幼なじみくんのせい、というのは公式設定」って解釈しちゃうのは、ちょっとさー、違うんじゃないかなー。 とはいえ、揉めに揉めたのは事実なわけで、じゃあ、その結果どうなったかっていうと──    ■□■□■□ 10月リリース:イベントストーリー 「仮装に胸キュン★彼とハロウィンパーティー」より一部抜粋 ○背景:会社のエントランス 私「主人公、おつかれー」 主人公「あれ、葵、どうしてここに?」 私「ちょっとこのあたりを通りかかったから寄ってみたんだ」 私「ところで、風の噂で聞いたんだけど、後輩くんの誕生日の日に出張することになったんだって? あんたもいろいろ大変だねー」    ■□■□■□ ──ハイ、これね。 このシーン、本当は上司が主人公に「出張にいってほしい」って伝えるはずだったんだけど、そうするとまた「上司さんが後輩くんを快く思ってなくて、わざと誕生日に出張を命じたに決まっている」なんて行間を読みすぎたご意見が届くかもしれないから、なぜか通りすがりの親友の私が「風の噂」で聞いたってことにして、出張のことを話題にするっていうね! いやぁ、不自然…ほんと不自然! でもさ、「主人公の親友」が伝える分にはよけいなトラブルを生まないから! 「主人公の親友」は、幼なじみくんや後輩くんの嫉妬の対象にならないから! というわけで、今月の私はあちらこちらで引っ張りだこだったわけですよ。 なんかもう「主人公の親友って『便利屋』でしたっけ?」ってつっこみたいところだけど、ひとまず預金通帳は「出演料」「出演料」「出演料」で埋まっているので、まあ…… ──え、心の隙間は埋まっていないだろうって? いやぁ、それは…………… 高級スイーツでも食べにいこうかなぁっ(やけくそ)! (※注) いや、もう本当にね、「素人がファッションショーのランウェイ歩けるわけないだろ」って当然のつっこみなんですけど、そこはもう「乙女ゲームあるある」というか。 そこはつっこんではいけないんじゃないですかね、乙女ゲームの作法として。 他にも「エキストラとして参加した映画の撮影現場で、監督に気に入られていきなり主役に大抜擢」とか「むりやり連れていかれたセレブパーティーで、ホテル王のスーツにワインをこぼして『面白ぇヤツ』って見初められる」とか。 どれも、まあ、乙女ゲームの醍醐味ってことで目をつぶってくださいな。
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