3780人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
41
シャワーでシーツの汚れた部分を予洗いすると、それを洗濯機に放り込む。
改めて熱いシャワーを浴びながら何度も深くキスをする。康孝はサチの腰にシャワーをあてると、中を掻き出すように丁寧に洗う。
「あれ」
「どうかした?」
「出血してる」
驚いた顔をする康孝にサチは今日何日?と何気なく尋ねる。
それを聞いてどうするのかと、康孝は一瞬首を捻ったが、合点が入ったようにサチの腰回りを丁寧に洗った。
「子供は何人欲しい?」
シャワーを済ませて身体を拭きあっていると、康孝が何気なくそう言った。
「そうね。できれば三人。由梨んち楽しそうだし」
「ああ、健次郎くんと由梨ちゃんのお子さん可愛かったね」
二人とも由梨に似て良かったよ、健次郎に似なくて正解とサチは悪戯っぽく笑う。
「俺もサチも一人っ子だもんね」
「康孝さんには妹がいるじゃない」
「そう言えばいたね」
「なにそれ」
笑って康孝の鼻を摘むと、半分でも可愛い妹でしょと康孝を諭した。
バスタオルのまま寝室に戻ると、サチは下着と着替えを取ってまた洗面所に向かう。
その間に康孝は着替えを済ませ、クローゼットを開けるとチェストの上に畳まれたシーツを見付け、もう乱れない戒めに、マットレスをベッドに戻してシーツを取り付けた。
サチがトイレを済ませて寝室に戻ると、康孝はノートパソコンを立ち上げてキーボードに指を走らせていた。
「コーヒーでも淹れようか」
「ああ、ありがとう」
目線をサチに向けて礼を言うと、またパソコンに向かってキーボードを叩いた。
サチはケトルで湯を沸かし、インスタントコーヒーをマグカップに入れ、湯が沸くまでダイニングの椅子に腰掛けて待った。
康孝がキーボードを叩く音を聞きながら、サチは眠い目を擦る。
ケトルの蓋が揺れる音で意識を戻すと、サチは淹れたてのコーヒーを寝室に運んだ。
「熱いから気を付けて」
デスクにコーヒーを置いてサチはベッドに腰掛ける。
「俺、しばらくここに居座っても良いかな」
マグを手に取ると、康孝は振り返ってサチに尋ねる。
「別に構わないけど、集中出来るの?」
「母さんが居るからね。あっちに居る方が落ち着かないんだよ」
「部屋も別だし、自宅の方が便利じゃない」
それに温泉に行きたいとか言ってなかった?とサチは康孝に尋ねる。
「あの人と数日でも過ごせば分かるよ。本当に台風みたいな人だから」
ゲンナリして康孝が溜め息を吐き出す。確かにイネスとは少ししか話をしていない。一緒に過ごしたらどうなるのか興味はあるが、康孝の顔を見る限り、楽しい様子ではなさそうだ。
「着替えとかどうするの?」
「朝になったら一度戻るよ」
「ついていこうか?」
「サチが母さんに捕まったら元も子もないよ」
康孝は苦笑いしてコーヒーを飲むと、サチには眠るように言ってまたパソコンに向かってキーボードに指を走らせる。
サチは飲みかけのコーヒーが入ったマグカップをサイドテーブルに置くと、横になってしばらく康孝の背中を見ていた。
キーボードを叩く音と時計の針の音が眠気を誘う。ドッと押し寄せる疲労感からサチはあっという間に眠りに就いた。
最初のコメントを投稿しよう!