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「ハァ、ハァ…ハァ。
やっと、追いついたよもう…。
にしてもここ、紫陽花が沢山咲いてるな。」
飛ばされる傘を追いかけて辿り着いたのは、青色に咲き誇る沢山の紫陽花の花たちだった。
ここに、こんなところあったんだ。
初めて知った。
「綺麗、だなぁ。」
咲き誇る紫陽花の花たちは綺麗だった。
見事に咲く紫陽花のそれは絵になる程に。
その風景を見て、僕は傘を風に飛ばされた苛立ちが一瞬で吹き飛んだ。
寧ろ今は、この紫陽花の花たちをずっと見ていたいと思った。
本当に、綺麗。
チリーン!
ん?この金属の鳴る音は何だ?
「ねぇ、お兄ちゃん、だぁれ?」
「ふぇっ?!…ってキミずぶ濡れじゃないか。
えっと、近くに屋根があるところ…あった!
キミ、こっち来て!」
「え、お兄ちゃん待って!」
僕の前に知らず現れた、ずぶ濡れの小学校3~4年生くらいの男の子。
思わず驚いてしまったがずぶ濡れになっている男の子に更に驚いた。
拭いてあげなきゃ、と思って咄嗟に周りを見渡し屋根のあるベンチを見つけた。
そこに僕は落としたままの傘を拾い、傘を持ってる反対の手で男の子の手を握り、
ベンチへと向かった。
「?何でタオル取り出したの?お兄ちゃん。」
「何でって、キミがずぶ濡れだからだよ。
そんなずぶ濡れでいたら風邪ひいちゃうよ。
だからこのタオルで拭かないと、ほらっ。」
鞄から取り出したタオルに不思議そうにする男の子。
それに逆に僕が不思議になるも、手に持ったタオルで男の子の頭を拭いた。
ワシャワシャ
「!お、お兄ちゃん拭かなくてもボク大丈夫だよ。」
「ダーメ、良いから僕の言うことを聞く。」
「むぅ。」
数分後
「よしっ、これでさっきよりマシになったかな。」
さっきまであんなにずぶ濡れだった男の子はタオルによってだいぶマシになった。
少しだけだけど、さっきより男の子の体温がマシになったかな。
「…お兄ちゃん何でずぶ濡れの見知らぬボクの頭からズボンの裾下まで吹いてくれたの?」
「え?何でって、キミみたいな子がずっとずぶ濡れでいたら風邪をひくだろう?
そんな子をずぶ濡れにしたままになんて出来ないよ。
それに、風邪をひいたら辛いだろ?
自分は別に風邪をひいてもいいけど、キミはダメだよ。
お父さんとあ母さんが心配しちゃうだろ?」
当たり前なことを言う男の子に、僕は男の子に諭すようにつらつらと言葉を並べた。
小さい子の風邪って重くなりやすいんだよね。
僕も小さい時、ずぶ濡れのまま放置しちゃっておもいっきり風邪ひいちゃったんだよね。
しかもその風邪が結構辛くて、何日も学校を休んだよな。
だから僕はそんな辛いことさせたくなくて、初対面の知らない男の子だけど自然と身体が
動いていたんだ。
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