番外編「新型コロナウイルス感染が身近で起こった」その1。

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番外編「新型コロナウイルス感染が身近で起こった」その1。

【この章を読む前に。今回は番外編】 さて、状況が落ち着いたので、前々から「つぶやき」で書いていた、を書きたいと思います。 できれば、この『明るいがんサバイバー』シリーズをざっと読んでおいていただくと、私がなぜ、これを書いたのか……ご理解いただけると思います。 この「番外編」は、抗がん剤治療を一度でもした人には、死ぬまで油断ならない「感染症」のお話しです。 意外と長くなってしまったので、2回に分けてお送りいたします。 今回は「その1」です。 2020年11月初旬、その日はシフト休みで家でのんびりしていた時に、メール着信。なんだ?と思ってみると、派遣元の担当・Wさんからの一斉通知メールでした。タイトルからして、こりゃ大変だな…とは思ったのですが……本文を読んで……ため息。 ……ついに出てしまった…… なんと、勤務先で新型コロナウイルスの陽性者が出てしまったのでございます。 「ああ、やっぱりなぁ…」 と、声に出して呟きました。特に驚きがなかったんですよね、実を言うと。 この連載(『明るいがんサバイバーのひとりごと』)を最初から読んでくださっている方は、私の仕事が、コールセンターのテレオペだというのをうっすら、覚えていてくださる方もいると思います。 24時間365日稼動、インフラ系。テレワークなんぞ絶対にできない仕事。 また、環境が環境故に、どうしても「密」になりやすい職場。 春先の、全国一斉・外出自粛期間中も、電車に乗って仕事に行きました。そういう人はたくさん、いらっしゃるはずです。デスクワーク・テレワークなんてできる人は、案外と少ないんじゃないかと思っています。 もちろん、勤務先側も、色々と対策を施してくれていますし、私たちオペレーターも「最初のひとり」にならないために、必死に「見えない敵との攻防戦」を繰り広げておりました(今も、攻防戦真っ最中です)。 しかし……いつ、だれがなってもおかしくない昨今。さらに、都内ではコロナウイルス第3波が発生し、とんでもない勢いで感染者数が増えている真っ只中で、ついに来たな~と……驚きもなかったのですが、さすがに…はい。 Wさん経由での勤務先からの連絡は、とにかく受付業務は一時休止して、オペレーター(社員さん、派遣社員も含めて)は自宅待機。個別に連絡が行った人には、PCR検査を受けて欲しいこと(検査費用は一時立て替えしてもらい、後日、勤務先が返金してくれることになった)などなど。 しかし、仕事の内容上、どうしても稼動させないとならない部署があり、これだけはどうしても…ということで、この部分に関しては、社員さんの一部が請け負うことになりました。 閉鎖は3日間、時間を区切って…ということになっていたのですが…… あまり仕事の内容の詳細は書けませんが……全国規模の仕事で、さらに一日の入電数が数千件に及ぶという、ちょっと特殊な仕事。さらに、タイミングも悪かったんですよねぇ…… それでも、全国各地に同じコールセンターがあるので、私たちの受け持ち区域の分も、全国のコールセンターのみなさんに一任のカタチになりました(全国統一システムを使っているからできることです)。 ところが……私たちがいるセンターが一番大きな受け持ち区域、かつ、人数も多いところ。 タイミングの問題もあり、各コールセンターも、今までにない事態に、ちょっと「大変なこと」になってしまって、サービス低下を危惧した会社の上層部が、予定より早く、受付業務を再開させるという連絡が来ました。 もちろん、無理強いはしませんが、出勤できる人は来て欲しいというメールも。 連絡が取れる同僚たちとメールやLINEでやりとりしたり、派遣元のWさんとも個別でメール、電話でのやりとりがかなりの回数で行われました。 私がシフト休みの曜日に起こった今回の出来事、たまたまその日、出勤していた人が、色々とLINEで教えてくれました。 Wさんや、私の体調と病気を知っている人たちは、 「無理しないでください」 と、お気遣いのメールも。本当にありがたいことです。 おかげさまで、濃厚接触者には当てはまりませんし、低空飛行ながらも体調はそこそこ大丈夫。熱もないし、食べる気力もあって、味もわかる。 ですが、ふだんから、 「カゼをひかないように注意してね」 と、主治医のA先生に言われているので……とにかく、今回の新型コロナウイルスに関しては、ビクビクしている自分がいました。カゼをひくと治りづらいというのは、自分でも理解していたので、カゼかなと思った時は、すぐにA先生に相談して早めに手を打つということをこの数年、繰り返していました。 で、翌日がシフト上、出勤日なのですが……散々考えた上で、やはり「怖い」ので、欠勤を決めて、Wさんに連絡、勤務先にも連絡して、その日はお休みさせてもらったのでした。 さらに、念のためと思って、私が住んでいる市の保健所へも相談、PCR検査を受けるにはどうしたらいいのか等を聞いて、さらにさらに、A先生のところへも連絡しました。 クラークのIさんを通じて、先生に相談すると、PCR検査を受けるのは問題はないよとのこと。やはり、受けたほうがいいよな、念のため……と思っていたのです。 ところが。 Wさんから、一斉メール(陽性者が発生した日から、毎日1~2通はメールが送信されてきました。私が所属している派遣会社さんと、担当のWさんはホント、よくやってくれます。ありがたいです)。 「え、えええええ?!」 再び、陽性者が出てしまったのです。この時点で4人目! 再開してから2日も経たないうちに、陽性者が出てしまった! 受付業務中止!再閉鎖!再消毒! そして、勤務している全員、PCR検査を受けてくれという通知が、Wさん経由で勤務先からやってきました。 自費になるPCR検査ですが、先にも書いたように、一時的に立て替え、領収書をもらって、それを提出してくれれば、のちほど返金する、ということ。できれば、即日検査、結果が出る病院で受けて欲しいということが明記されておりました。 しかし……問題は、その費用。のちの返金されるはいえ、自費!自費ですよ! ネットで相場を調べてみると、2万から5万と、かなり差が出ている! 「そういえば、保健所の人も言っていたなぁ」 病院によって、金額が違うと保健所の人も言っていました。 で、私が暮らしている市では、即日やってくれるところがないので、勤務先のUさんが、これまたWさん経由で教えてくださった都内某所にある病院へ行くことにしました。 その病院では、予約はwebでOK。簡単な問診をしておけば、当日、問診の手間も省けて時短になるというシステム。 「ほえ~……今はこうなのか…」 と、思わず感心してしまいましたよ。まぁ、この病院はちょっと特殊でして、感染症専門の病院なので、色々と事情がある方も多いので、そういった人たちに対する配慮もなされているようです。 翌日。 予約した時間の10分前に、病院へ到着。 受付をしていると、同僚がふたり、ドアの向こうから顔を出しました。 「あ!おはようございます」 「わ、KさんにJちゃん!おはようございます~」 「あれ?カナデさんもこっちに来たの?遠くない?」 「いや、たまたま、こっちに用事もあったんで、ついでというか(笑)」 で、3人で一緒に検査を受けることに。 徹底したプライバシー配慮&医師との問診はなんと、ウェブ会議システムを使って行うという徹底ぶり。イマドキなんだなぁと思いながらも、Kさん、Jちゃんと話しをしてみると、陽性の人が出たと知らせが来てから、ふたりとも出勤を自粛しているとか。まぁ、そうなるだろうなぁ。 その後、30分弱で検査と問診は終わり。 結果は、渡されたQRコードで読み取り、IDとパスワードを入れて確認ができるとのこと。時間的には12時お昼に受けたので、その日の20時過ぎには見られるようになるといわれまして……私たちはそのまま、病院の近所でコーヒーを飲みながら、情報交換という名の雑談(笑) 仕事柄、KさんとJちゃんとは、私の勤務時間はズレています。こういう時じゃないと、なかなかお話しもできないし…ということもありました。 Jちゃんは、お母さんと一緒に暮らしているし、Kさんには中学生と高校生のお子さんがいますし、旦那さんもおります。今回の件で、家族にまで心配かけてしまうカタチが、とてもしんどいとも。 私自身も、このままでは、また実家に帰るときが遠くなってしまうと愚痴をこぼしたり…… 「でもさ、最初の人を責めちゃダメだよね。誰がなってもおかしくないんだから」 と、Kさんが言うと、私たちは「もちろん」と頷きました。 誰が最初に発症したか、詮索するなかれ…というのは、派遣元のWさんからのメールにも記載されていました。が、そこはかとなく、最初に症状を訴えたのが誰なのか…というのは、私はうっすら、わかってしまっていました。むしろ、その人が、今後、復帰してくれるかどうか…そして、今、すごく凹んでいるんじゃないかなぁと心配でならなかったのです。 他にも、色々…ふだんは話せない分、3人であーだこーだと話しに花を咲かせ、今回の勤務先の対応についても、杜撰だという結論に至り……まぁ、色々、あるんですよ。詳細はあえて割愛させていただきます。 その後、お店の前でふたりと別れ、私は別件の用事を済ませるために地下鉄に乗って、目的の場所へ行き、そのまま、帰宅しました。 悶々とした時間を過ごし、20時過ぎ、スマホでQRコードを読み取り、検査結果がわかる……送信ボタンを押すのですが、これがすご~い怖かったんです。怖いなんてもんじゃない。 こんなの……がんが発覚して以来の怖さ。 卵巣がんが発覚した当時の私を、不意に思い出しました。あの時も本当に怖かった。今回もその時と同等の恐怖感が押し寄せてきたのです。 でも、結果を見ないわけにはいかないので(涙)、思い切って、タップ! 『診断結果:陰性』 「お、おおおおおおお……!」 そのまま、クッションに倒れ込みましたよ(笑)スマホを手にしたまま、全身からチカラが抜けていくのがわかりました。 よかったあああああ……ああ、本当によかった……(涙) 慌てて起き上がり、Wさんへ診断結果をメール送信。21時過ぎだったのですが、検査結果が出次第、連絡することになっていたので、送信。 と、21時過ぎにもかかわらず、Wさんからは丁寧な返信が来ました。 『それは本当に良かったです。実は、カナデさんが一番心配でした(笑)よかったです、本当に。勤務先のUさんにも伝えておきますね!』 Wさん、実は奥様が看護師さんだとか。だから、前の担当者・Kさんから私の件を引き継いだ時、奥様に色々、教えてもらったこともあるそうです。勉強熱心な営業さんだなぁ。そして、本当にありがたい。前の担当・Kさん、その前の担当、Tさん(KさんとTさんは女性です)といい……私の所属している派遣会社って、本当によくやってくださるし、色々、相談にも乗ってくださる。 派遣社員になって長いけれど、男性の担当はWさんがふたりめ。前の男性営業さんには、あまりいい思い出がない(というか、期間が短かったからね)のですが(笑) 「僕はもともと、某大手清涼飲料会社の営業、やっていたんですよ。でも、数年前に思い切って、今の会社に転職したんです」 いつだったか、顔合わせの時、そんな話をしてくださった。その時に培ったものも大きいのだろうな。でも、派遣会社の営業って相当に大変だと思うんだけれど……Wさんも、前の担当の方々も、みなさん、本当にいい人ばかりで、私はこのことに関しても、運がいいなって思っています。 派遣会社によっては、色々……噂もあるけれど、少なくとも、私は、今の派遣会社に登録してよかったと思います。 さてさて、今回のPCR検査で「陰性」と判断された人のみ、出勤してもOKという話しになり(もちろん、無理強いはさせないという条件つき)、業務再開は某日の21時から。 私は、その翌日が出勤日だったので、思い切って出勤してみたのですが、案の定、出勤している人はかなり少ない……そりゃそうだわなぁ。 ロッカールームで私物をしまい込み、仕事用バッグを手にして部署へ入ると、そこにいたのは正社員のIさんでした。 「おはようございます」 「あ、おはようございます、カナデさん。今回はご心配とご迷惑をおかけしてしまいました。本当に申し訳ないです。そして、出勤、ありがとうございます」 と、丁寧に話しをしてくださったIさん。 Iさんがここにいるってことは、彼も無事だったということになります。 で、念には念の入れてということで、病院からの陰性診断結果と私のIDカードを並べて、それをIさんの仕事用スマホで撮影。 部署の中は静かです。いつもの3分の1……だなぁ。 「あの…Iさん、ちょっといいですか?」 「はい。お伺いします」 いつも、明るいIさんですが、さすがに今日ばかりは神妙な顔つきです。 ……この続きは、次回……ということで。 まだちょっと、続きます。                 (その2へ続く)
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