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CPAP治療開始と、病院・医師との相性。
I先生に紹介されて、やってきたのは、いつもの最寄駅から徒歩5分もかからない、街の開業医院。呼吸器内科がメインで、内科・がん治療もやっているという。
「あれ?ここ、駅に掲示されている病院だよな?」
駅の宣伝看板には病院が多いけれど、そういったもののひとつだと、すぐにわかった。
そ~っと入口から中へ入ると……少し混雑している。金曜日の午前中という時間帯に行ってみたけれど、意外と混んでいる。私自身、シフト休みが平日ということもあるから、まだいいのかもしれない。
受付に申し出て、手にしていた紹介状を手渡すと、優しい笑顔のクラークさんが、てきぱきとお話しをしてくれた。
必要手続きをとって、待合室の片隅に空いていた席を見つけて、腰かけた。
待合室を見渡すと、壮年の男性女性が多いかな…と。お年寄りも多いなあ。
やがて、呼ばれて、通された診察室には、小柄な初老の男性医師・C先生がいらっしゃった。
「初めまして。僕はCといいます。I先生からの紹介状、拝見しましたが、確かにこれは重症ですねぇ…」
「ああ、やっぱり」
頭痛持ちでもあり、眠りも浅い。
がん治療のことはもちろん、精神面での不安定さや心療内科に通院歴があることなどなど…自分が気づいていることや、小さいころからの悩みなどを少しお話しすると、C先生はそれらを聞いて、カルテに手書きで書きこんでいく。
そこで、C先生からCPAPの治療について説明された。
CPAPの機械は、在宅医療機器になること。レンタル制。
毎晩、取り付けて眠ること。
社会保険対象にはなるのだが、1か月4000円強、かかること。
1か月に一度は再診を受けること(この時にレンタル料と再診料を一緒に支払います)。
旅行に出かける際にも持って行くこと。お昼寝時も取り付けること……つまり、寝るときには装着が必要ということだった。
「眠ることってね、ヒトにはとっても大事なことなんですよ。まずは1か月、やってみてください。人生が変わるくらいに変化がある人もいるんです」
まさか、そんな話しは…と思った。先生が言うのは、大げさなんじゃないかとも。
でも、A先生も、H先生も、I先生も……必ず、結果を出してくださるように治療し続けていただいているし、C先生のことも、まずは信用してみようと、この時、思った。
これって、大事なことなんじゃないかと思う。
病院やお医者さんとの「相性」って、本当に大事なことだと思うのだ。
この『がんサバイバー』シリーズでも、コメントでいただいていることがあるのだけれど、とにかく、私は「お医者様運・病院運がいい」。
特に、婦人科の主治医・A先生だ。
本文中でも頻繁に登場してもらっているA先生は、私から見ていると、
「近所のおにいさん(おじさんというには、失礼になるくらいにお若く見える。実際は私と同世代くらいじゃないかな…)」
という雰囲気。
話すときも穏やかで、でも、わかりやすく、かみ砕いて説明をしてくれる。また、こちらがわからないことを質問すればとことん、聞いてくれるし、それらに対しても真摯に返事をしてくれる。
非常にお忙しい先生なのだが、このあたりは本当に丁寧だ。
そして、ユーモアも忘れない。ご自分のことも少し話しをしてくれる(お子さんがふたりいること、奥様も同じ産婦人科の医師であること、実のお兄さんのお話しなど。これも珍しいと思う)。
決して、しかりつけることはないし、上から目線ということもない。かなりの腕利きで評判のいい医師だという話しも聞く。
実際、とても私はA先生(と、看護師のみなさん)を信頼している。そうでなければ、ここまで書かない。
こういうのって、患者自身の「気持ち」も大事なんじゃないかと思うのだ。
「何をきれいごとばかり並べやがって」
という、反発を喰らったこともあるのだが(笑)、実際、患者として思うことは、
「自分がいいと思った「ひらめき」を信じること」
と、
「周囲の声に振り回されない、強い気持ちが必要」
だということだ。
患者側も、診察を受けるための心構えが必要だということ。
大げさに言えば、自分の命を預けるわけだからね。覚悟も必要。
もし、自分に合わないなって思ったら、セカンドオピニオンという手もあるし、病院を変えることも必要。
医師や看護師、病院、そして患者本人や家族…お互いに「協力」してこそ、治療というのは進んでいくものだと、患者として強く感じている。
話しを戻して、CPAPの件。
C先生のところから、とある場所へ連絡が入り、翌日の午後に営業の男性がやってくることになった。
雨の中を、営業の男性は小さな肩掛けバッグと、部品などが入った小さな箱を持ってきてくれた。
私が受けるのは、持続陽圧呼吸療法と呼ばれるもので、必要な医療機器はCPAP(シーパップ)=continuous positive airway pressureの略称で酔荒れる、日本では数社から出されているものだ。
特に、私がレンタルすることになった医療機器メーカーのものは、かなり軽量。本当に軽量。ただし「精密医療機械」。
小さな肩掛けバッグの中に、すべて収まるように作られている。
「なんでバッグ?」
「旅行やお出かけする時にも持って行ってほしいからです」
「ああ……」
よくできてる……ホント。
その場で、ヘッドギアの取り付け方や取扱い・お手入れ方法、注意事項などを聞いて、実際に取り付けてみる。
鼻全体を覆うようなマスクを取り付けて、スイッチを入れると……
「げっ!?」
ものすごい勢いで空気が送り込まれてきた。
「これ、すっごい勢いじゃないですか?」
というと、営業さんは、
「でも、これがデフォなんですよね。しかも、このタイプはオート設定されているから…たとえば、睡眠時に呼吸が浅いな、止まるかな…というのを自動的に感知して、空気圧を自動的に変えて送り込んでくれます」
「へええ」
「あと、データ送信は、この本体にmicroSDが入っていますが、カナデさんの通院しているC先生のところには、自動でデータを受け取る機械が設置されているんで、特にSDを持って行く必要はないですよ。携帯の電波と同じシステムですね」
「ほえええ……」
いやはや、すごいわ、本当に。
ちなみに、これを購入しようとすれば、軽く30万はかかるという。
レンタルって逆に効率悪くない?って思われた方もいるはず。でも、レンタルのほうが、最新の機械を使えること、また、いつでも部品交換や機械のメンテナンスを無料で受けられること、機械に関する相談窓口も無料で利用可能。年に一度、必要な部品(本体以外)が無料で送られてくることが含まれている。
とにかく、バックアップ体制がすごい。
「ああ、それから……」
と、営業さんが説明してくれたのは、冬バージョンと夏バージョンがあって、夏バージョンは特に難しくはないのだが、冬バージョンは本体に「加湿チャンバー」を取り付け、ホースも電熱線入りを使うのだとか。この時は、電熱線ホースはなかったのだが、後日、C先生と相談して送付してもらった。
「加湿チャンバーには、できれば精製水を使ってください。水道水はカルキ臭もあるし、カルキですぐに白く汚れてしまって、詰まってしまうこともあるからです」
「はい、わかりました」
今、自分は、CPAP用に、Amazonプライムで高純度精製水20ℓ入りを購入してキッチンの片隅に設置してある。
また、冬場はどうしても水滴が鼻マスクに溜まるので、これを解決するには本体の温度調節もそうなのだが、それでも溜まる(溺れるくらいに溜まる…)ので、めんどくさいと思いながらも、化粧用コットン1枚を縦半分に切って、それを鼻マスクに挟み込む。これで水滴対策が出来ている。
一週間に一度はお手入れも必要だし、取扱は難しくはないが、精密機械なので、慎重に扱っている。見た目は単なる黒い箱だけれど、非常に高価な「「医療機器」であることには変わりはない。
自宅マンションから離れるときも、バッグに全部収めて、必ず自分で持ち運ぶようにしている(荷物になるけれど、軽いからまだラク)。
使い始めて10日ほど経った頃には、空気圧などにも慣れてきた。私は幸い、CPAPは苦にならないみたい(かなり個人差があります)。
ある日、朝起きて……気づいた。
CPAPを使う前は、寝ても寝ても疲れが取れないことが多く、朝、起きてぐったりすることも多かったのだが、目を覚ますと、アタマの中が意外とスッキリしていることに気づいた。また、頭痛の頻度が激減していることにも気づいた。
初めての再診時、そのことをC先生に話すと、
「でしょう?前回、お会いした時よりも顔色がいいし、I先生からもらったデータと比べると、顕著なんですよ」
と、プリントアウトした用紙を見せてくれた。なるほど…
ただ、このCPAPは「終わりのない治療」だとも言われている。
毎月の再診、そして、CPAP治療は、この先も続く。
※これと並行して、減量対策なども有効だと言います。
「がんサバイバー」シリーズともども、ここに書かれていることは、私個人のことであり、治療法などは色々ありますし、個人差があることもお忘れなく……
(続きます)
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