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これじゃまるでミカン星人だ……。
鏡の中に映るデコボコとした肌を見て、思わずため息が漏れ出る。
私は艶を失ってしまった頬っぺたをポンポンと両手で叩いてから、ぬるま湯で顔を軽く濡らし、洗顔料のボトルをプッシュする。手のひらにのっかった泡の塊を肌全体にこすりつける。
あまり丁寧とは言えない洗顔を終えると、化粧水や乳液を使うこともせずに歯磨きに移る。口の中をすすぎ終わったときちょうど、玄関のチャイムが鳴った。
どうやら宅配便が届いたようで、母が応対していた。
洗面所から廊下に顔を出すと、
「岩佐……綾香様、えっと、送り主は――」
ぼそぼそと呟く母の声が聞こえてきた。
最近、老眼が入ってきたらしい母は、両手に抱えた白い箱と顔とのあいだに距離を取って、目を細めて送り状の文字を読み取っているところだった。
「あ、綾ちゃんに荷物みたいよ」
私の気配を感じたらしく、母はふと顔をあげて箱を差し出してきた。
母は先ほど私の名前を呟いていたのだから、自分宛ての荷物であることは予想はできたが、送り主については全く心当たりがなかった。
「誰からだろう?」
教材も頼んだ覚えもないし、趣味は封印しているのでアクセサリーの創作キットやメイク用品も届くはずはなかったから、受け取ってはみたものの、詐欺の類じゃないかと一瞬ドキッとした。
けれども、送り主の名を見ると、どうやらそうでもなさそうではあった。それなのに、どうしてか、一瞬心臓が大きく震えた……。
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